巻ノ百九 姉妹の絆その九
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「しかも無類の頑固者じゃ」
「ご幼少の頃からですな」
「度々注意しておるがな」
「それがかえって」
「わしがあ奴を嫌っておるという話になっておる」
それでというのだ。
「これは濡れ衣じゃが」
「あの方のご気質は」
「困っておる、しかもな」
「はい、ご舅の伊達殿が」
「あの者は厄介じゃ」
「島津家や毛利家と同じく」
「表では従っておるが」
その実はというのだ。
「それはあくまで表だけじゃ」
「何時牙を剥くかわかりませぬな」
「毛利や島津は天下を望んではおらぬ」
例え幕府に思うところがあってもだ、家康はこのことははっきりと見抜いているのだ。
「しかしな」
「伊達家はですな」
「違う」
彼等とは、というのだ。
「だからじゃ」
「この度のことは」
「よく調べさせるか」
服部達にというのだ。
「そうするか」
「ではこのまま」
「うむ」
まさにというのだ。
「伊賀者達にな」
「頑張ってもらいますか」
「そうする、若しやな」
「この度のことは」
「わしが思っている以上にじゃ」
「大きいですな」
「天下を揺るがすまでにな」
それ程までにというのだ。
「大きいやもな」
「その可能性が出てきましたな」
「そうじゃな、ことと次第では」
「今お考え以上に厳しいことを」
「せねばならぬか」
覚悟をしている言葉だがその覚悟はさらに強まっていた。
「そうも思った」
「左様ですか」
「そして辰千代もな」
彼の子もというのだ。
「我が子、そして大藩を預けておるが」
「いざという時は」
「断を下す」
「改易もですか」
「そこからの蟄居もじゃ」
藩として断を下すだけでなく、というのだ。
「考えておくか」
「改易ですか」
「やり過ぎか」
「これが外様の分家の小さな藩ならともかく」
「大藩、しかも身内であるからな」
「相当ですな」
「そうじゃな、しかしな」
それでもと言う家康だった。
「いざという時はな」
「断を下さねば」
「天下に示しがつかぬからな」
だからこそというのだ。
「ここはじゃ」
「辰千代様もですか」
「そうする」
「左様ですか」
「政に贔屓があってはならぬな」
「はい」
このことについてはだ、崇伝もその通りだと答えた。
「それは乱れる元です」
「悪事は誰が犯してもじゃ」
「然るべき裁きを下してこそです」
例えそれは一等二等断じてもだ、裁きは必要だというのだ。
「政は定まります」
「その通りじゃな」
「極端を言えば大御所様もです」
天下人である家康自身もとだ、崇伝はあえて言った。
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