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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
Fate/Grand Order編
悲劇で終わりの物語ではない
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ていることからその英雄が実在した可能性を後押ししている。またその"名の無き英雄"の存在した最も有力な証拠は現在のブリテン島に残る"サクソン焦土"である。あの伝説的君主アーサー王が苦戦を強いられたとされるサクソン人たちをその"名の無き英雄"は圧倒的な力で一蹴したとされている。()の"名の無き英雄"がサクソン人と会い(まみ)えたされる場所では今なお平原の状態が続いており、現代では魔力を秘めた鉱石が多く見つかることで魔術師の世界では有名とされる場所である。文献には蛮族であるサクソン人たちの前に立ち、彼らを挑発するが如く右手の中指と人差し指を天に突き上げ彼らを一蹴している姿が描かれている。このことからも彼の桁外れの力が伺え、これまで数多くの魔術師たちがその鉱石を触媒として聖杯戦争にて()の英雄を召喚しようとしたが全て失敗に終わっている。仮にその"名の無き英雄"が聖杯戦争にて召喚された場合聖杯戦争はすでに終わっているとさえ言われている。……"


「─。」

 ウィスは膝上の本を閉じ、コーヒーを口に運ぶ。コーヒーによる苦味が読書により沈んだ意識を覚醒させ、凝り固まった身体に活力を取り戻させた。ウィスは灌漑深けに本の表紙のタイトルを見つめる。

「"名の無き英雄"ね…。」

 言うまでもなくそれは自分のことである。ウィスは何とも言えない気持ちで手元の本の表紙を見つめる。

 後世に自分の名前が伝わらないことが分かっていたこととはいえ複雑な気分である。まさか自分の存在が世間に認知されることなく都市伝説と化していたとは。加えて本まで出版されていようとは。当の本人は未だ存命中であるというのに。

「ねぇ、アキト。アキトは本当にそんな人物がいたと思う?」

 今日の業務を終えいつものように自分の部屋へと訪れていたマリーが疑問の声を上げる。彼女の普段の刺々しい雰囲気は鳴りを潜め、ウィスの部屋の椅子に座りながらリラックスしていた。普段の彼女を知る職員たちが今の彼女を見れば驚くこと間違いなしである。

「─いたんじゃねーの?そう考えなければ人理に数多く残されている謎の辻褄が合わないからな。」

 というかそれは俺のことだから。君の隣にいるから。灯台下暗しだから。

「人類史に名を刻まなかった英雄ね……。」

 マリーは余程その英雄のことが気になるのか怪訝な表情でウィスが手に持つ本を見ている。

「なんだ?気になるのか、マリー?」

 マリーはウィスから本を受け取り、感慨深けに本の表紙を眺めていた。



 オルガマリー・アニムスフィア。彼女はあの魔術協会の総本山である時計塔を総べる12人のロードの一角、アニムスフィア家の現当主であり、この人理継続保障機関フィニス・カルデアの現所長でもある凄腕魔術師だ。


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