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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
Fate/Grand Order編
悲劇で終わりの物語ではない
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 時には─

 ウィスが降り立つは冥界。

 あらゆる命ある万物が死後辿り着く世界。生者の姿はどこにもなく、遥か遠方まで殺風景な風景が続いている。

 杖を右手に持ち、冥界の大地をウィスは踏みしめる。ウィスは静かに誰かを探すように辺りを見回す。

 その場に広がるしばしの静寂。



「遅いのだわ、ウィス。」

 やがてウィスの目の前に光の粒子が集まり一人の女神が現れた。彼女こそ女神イシュタルの姉であり、この冥界の主人、エレシュキガルである。

 彼女は拗ねているのか、顔をこちらに合わせてくれない。少し待ち合わせの時間に遅れてしまったことを気にしているのだろう。

「悪い、エレシュキガル。」

 左手を顔の前に掲げ軽く謝るウィス。本心からの謝罪ではなく社交辞令であったが。対するエレシュキガルも然程気にしている様子は見られない。このことからこの2人は相当仲が良いことが伺えた。



 彼女との付き合いはウィスが軽い気持ちで冥界へと訪れたことから始まる。

 冥界内ではエレシュキガルの法と律にたとえ神であろうと縛られるはずなのだがやはり流石のウィス。全く動じることなく冥界を散策していた。

 やがて2人は冥界の深奥近くにて互いに邂逅する。かくや戦闘へと至りそうであったが何とかウィスの尽力により事態は終息した。

 その後無事に誤解も解け今の関係に至るわけだ。

「まあ、いいわ。それで今日は何を持ってきてくれたの?」

 目をキラキラと輝かせ、興味津々な様子ででこちらを見つめてくるエレシュキガル。言葉ではとげとげしい物言いだが内心ではウィスの到着を心待ちにしていたらしい。

 彼女の生い立ちと彼女を取り巻く環境を考えれば当然のことなのかもしれないが。

 彼女は冥界の女神としてこの世に生を受けた瞬間からこの冥界に永遠と縛り付けられているのだ。また冥界ではたとえ神であろうと縛られてしまうため、これまで自身と対等の存在など存在しなかったのだろう。ウィスは生まれて初めて出会った何の気兼ねも感じることなく話すことができる相手なのだ。

「今回はギルが有している神酒だな。」

 全く悪びれる様子もなく杖の中から神酒と黄金の杯を取り出すウィス。この男、人の者を盗んできたというのに気楽なものである。

「ギルガメッシュ王の持ち物を盗んできたの?」
「問題ない。俺とギルの仲だからな。」

 ドヤ顔で親指を前に突き出すウィス。そんなウィスの様子に呆れてため息を吐くエレシュキガル。

 次にウィスは手元の杖から煌びやかな装飾が施された机と椅子を取り出す。この杖はその物体を取り組んだときの状態で永続的に保存することが可能なのだ。

 向かい合い形で座り合い、
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