97香里と栞も秋子ちゃんに起こされた
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って夜の使い魔が捕食を続けていたので成敗したと伝えられた。
それによって現場に残った巨大な爪跡と、今まで通り魔として処理されて来た、不良グループや暴走族の車に残っていた傷跡が同じなのは黙殺された。
「君、ちょっと来て」
婦警に呼ばれ、香理がいる部屋へ連れて行かれる祐一。
「ふふっ、おいしい? 今日のおかずはハンバーグよ、好きだったでしょう」
血にまみれたストールを掛けた椅子に向かって、懸命に箸を運び話し掛けている香理。 きっとあのストールだけは、何があっても手放さなかったに違いない。
「沢山食べないと、胸大きくならないわよ、祐一に嫌われても知らないから」
そして箸から離れた食べ物は、椅子や床に向かってボトボトと落ちて行き、周りの床には、ご飯やおかずが散らばっていた。
「始めからずっとあの調子なの、お弁当を二つ用意しても、自分では絶対に食べようとしないし、私達が妹さんのふりをしようとしても、あのストールに手を掛けたとたん、物凄く暴れ出すの… 今日にも病院に送られる予定だけど、貴方から何か声をかけてあげて」
例え鬼でも、こんな状態の娘を取調べようとは思えない。 痛ましい香理の姿を見て涙ぐむ婦警は、祐一の背中をそっと押した。
「…香理」
声に気付き、一度だけ振り返る香理、その表情に以前のような覇気は全く無く、目の焦点があっていない美汐と同じくレイプ目で、別人のようにやつれ果てていた。
「栞、祐一が来てくれたわよ、良かったわね」
「どうしたんだよっ、しっかりしろっ! お前がそんなじゃあ、栞は浮かばれない」
しかし香理はキョトンとして、何を言われているのか分からない様子だった。
「もう栞は死んだんだ、俺達が無理にでも生きていて欲しいって思ったから、死んだ栞の体に化け物が入れられたんだろ?」
「な、何言ってるの? 死んだ、栞が?どうして?どうやって?」
ガタガタと震え出し、事件の核心に触れられると香里は壊れる。
「お前が化け物を殺してやったんだろ? 思い出せよっ、最後に栞が言ったじゃないか「ありがとう」って「これでゆっくり眠れる」って」
「嘘よっ! 栞が死ぬわけ無いじゃないっ、あなたの方こそどうかしてるわっ、自分の恋人が死んだなんて、よく言えたわねっ!」
そう言いながらも、目を泳がせ、エンドロフィンの欠乏と血糖値の低下でガクガクと両手と体を振るわせる。
そこで見かねた監視の婦警が、耳元に来てささやいた。
「お願い、嘘でもいいから、この子を少しでも安心させてあげて」
「は、はい…」
とっさに思い浮かぶ良い嘘は無かったが、何となく有りがちな、病院でも言った嘘を言ってみる。
「栞は… お前と一緒にいるじゃないか」
嘘を探す祐一、しかし「心の中で生きている」「霊になって見守っている」そんな話では到底
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