97香里と栞も秋子ちゃんに起こされた
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した、栞だった物。
何もかも食われてしまった体の、どこにそんな力や考えが残っていたのか、仲間に引き込もうとした姉とは違い、恋人の命は救おうとした。
「シッ、栞っ!」
魔物化を始めていた香里でさえ目を覚まし、魔物の目をした表情から、血の気が引いた人間の顔に戻った。
「お、お姉ちゃん、私を殺して… ココジャナカッタ、血管ヲ切ッテ…」
最後の力でカッターを姉に向って投げ、喉笛を切っても死ねない体にされたのを悔やむ。
右手は今にも祐一を握りつぶしそうで、全ての力を使ってその手を抑える。
「そんなのっ、できるはず無いじゃないっ」
「オネガイヨッ、ワタシノテデッ、ユウイチサンヲッ! ニギリツブサセナイデッ!」
般若の形相で右手を抑え、首を左右に振り乱して全力で魔物に抗う栞だった物。
「ああっ、あああああああああああっ!」
妹の最後の願いを聞き届けた姉は、自分の恋人でもある祐一を救う、唯一の手段と思われる攻撃を仕掛けた。
喉の前ではなく横、動脈が脳に繋がって、血液を送り出している管を栞のカッターで切り裂いた。
「許してっ! 栞っ! 私を許してっ!」
魔物の腕力では脆いカッターなど一瞬で砕けてしまうので、刃を出し直して二度、三度と刃を当てて、妹の脳に血液を送り出している管を左右とも切った。
「ア、アリガトウ、お姉ちゃん。やっと、自分に…戻れた…、きっと…ゆっくり眠れる……」
頚動脈から噴き出す返り血を、無言で目を見開いたまま浴びる香理。妹の最後の言葉は、魔物の声では無く、人間だった妹が発したように聞こえた。
「栞っ、栞いいいいいいっ!」
『グ、ゴガッ、グアアアッ』
断末魔の声を上げると、次第に魔物の気配は消え、妹だった体を取り戻せた。
「嫌ああっ!! 栞っ! 栞〜〜〜!!」
翌日のテレビでは、「17歳女子高生、妹を殺害」のニュースが全国のトップを飾っていた。
「調べによりますと、殺害された少女は不治の病にかかり、余命一年以内の宣告を受け、先日、姉も同じ病気を患っていた事が判明した事から、当局では死を目前にして苦しむ妹を見かね、心中を図ったのでは無いかとの疑いから、調査を続けています」
血痕の残る現場からの中継と、どこかの児童心理学者がコメントを付け加えた後、アナウンサーはこう締めくくった。
「尚、犯行後自殺を図った少女が「妹の体を乗っ取った化け物を追い出すため、仕方なくやった」と自供した事から、少女の精神鑑定が急がれています」
香理の家族も同じような供述をした事から、栞は死の恐怖から来る人格の乖離、もしくは脳障害により別の人格が形成され、様々な奇行に走ったのでは無いかと推定されていた。
一緒にいた祐一も取り調べを受けたが、天野家の執り成しと圧力で妖狐絡みの事件だと説明もされ、災厄が起こ
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