97香里と栞も秋子ちゃんに起こされた
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重ねないでっ」
姉として人として語りかけるが、もう栞にはそんな人間用のお綺麗な言葉は届かなかった。
『アア、マタオネエチャンカ、ハイドウゾ、オイシイヨ』
手近な死体から内蔵を抜き取って差し出す栞だった物。
やはり香里は内臓の臭気と力に引き寄せられ、フラフラと歩み寄っていく。
「香里っ、何してんだっ、離れろっ」
離れた場所から声を掛けるだけに徹するよう言われていたのに、栞の右手の射程に入って、内臓に手を伸ばす。
祐一も、香里まで魔物に食われてしまい、内臓を欲する体になっているのを知らなかった。
初期状態として体が欲する生肉をわざと遠ざけたり、肉類が欲しいので穀類豆類も食べられなくなる。
脳は今までより糖分を求め、喉の血を欲する乾きや、火照りを抑え冷却も可能な食品を探している香里。
しかし、本当に欲しい生肉、それも血が滴っている内蔵を出され、手に取ってしまった。
「オ、オイシソウ」
「やめろっ、香里〜〜っ!」
香里が掴んだ物を叩き落とし、本人の目も覚まさせるように頬を叩く。この時点で祐一も、香里にも魔物が入って人肉を求めているのだと気付いた。
「か、香里、お前まで?」
『ウフフ、ソウデスヨ、ユウイチサン、オネエチャンモナカマヨ、ミンナデタベマショウ』
「そんな、そんな事ってっ!」
真琴、美汐に続いて栞に香里、祐一の周囲から少女たちも狩られていた。
舞は既に佐祐理の中に入れられた魔物に気付き、日に日に壊れていって破滅して、猫でも野良犬でも捕食した親友。心も魂も食われていく友人を見かねて、中に潜む魔物と共に葬っていた。
名雪も秋子も天使の人形に闇落ちさせられ、祐一に選ばれることがない闇の存在にされていた。
残るは親友を斬り捨てて壊れてしまった舞が、この戦いの勝者と最後の魔物を斬って心中する予定で、あゆしか残れない。
「アア、オイシイ、オイシイノ」
手についた血を舐め、落ちた内蔵を取ろうとするので、何度も頬を叩いて肉から引き離す。
『ジャマスルナ、ソイツニモ、ナマニクヲ、ハライッパイクワセロ』
魔物になった栞が右手の腕力で祐一を払おうとしたが、残された意識が恋人を吹き飛ばされないように柔らかく掴み、次に見えない手が握り潰そうとした時、一瞬支配から逃れた左手がポケットから何かを掴み出した。
ザシュッ
天使の人形が作った障壁に守られ、妖狐の障壁を展開している闇の存在。
魔物や妖狐を傷つけられる骨の小刀は、まだ祐一が握っていた。
舞の木刀にも警官の銃弾でも傷付けられなかった栞だが、以前自分で手首を切って血を吸わせ、自傷や自殺を許可して自分と同化していたカッターは例外だった。
「祐一さんっ」
左手で自分の喉笛を掻っ切って、最後に残された本能で魔物から自分の恋人を救おうと
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