EX回:第10話(改2.2)<第2ラウンド>
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ているつもりだが、さすがに予測不可能な事態が積み重なると混沌としてくる。
そうやって一人で緊張している私の異常な雰囲気に気が付いたのだろう。ブルネイの五月雨が声をかけてきた。
「提督? どこか調子がお悪いのでしょうか」
「あ、いや別に」
私はインカムの送話口を跳ね上げて応えた。
それでも彼女は心配そうな瞳でこちらを見詰める。
「あの……何か冷たい物を、お持ちしましょうか?」
「あ、そうだね」
ブルネイの五月雨は親切だ。軽く会釈をして彼女は立ち去った。その心遣いにホッとした。
(五月雨か)
確か美保にも居たはずだ。今度、もし無事に日本に戻ったら調べてみよう。
突然、実況が叫んだ。
『み、見て下さい! ……アレ?』
観客は一斉に制空権争いが繰り広げられている上空を見た。私も再び双眼鏡を覗き込む。そこではブルネイの赤城さんと日向が放った瑞雲と彗星が各々爆撃体勢に入ろうとしていた。相手の瑞雲は水平爆撃、彗星は急降下爆撃か。
(まずいな)
演習とは分かっていても、この構図は絶望的な状況だ。
だが美保の比叡が健気に叫ぶ。
『お姉さまを、お守りしますっ!』
彼女は対空砲火を開いて迎撃を始める。そのとき蹲っていた美保の金剛も起き上がり歯を食いしばって共に反撃を試みた。
『Fire……』
いつもの覇気がない金剛。何となく砲撃も弱々しい。
(そうだよ、ついさっきまでゲロゲロやっていたのだから)
そのときインカムに美保の龍田さんの声。
『金剛さん比叡ちゃん、無理に反撃すると被害が増えるわ。相手の赤城さんたちも直撃は避けてくれるから、その場を動かないで!』
続けて美保の赤城さんの声。
『そうよ。ちょっと痛いかもしれないけど』
「あれ?」
魚雷の水柱に隠れて見え難かったが双方の赤城さんと日向は戦っていないのか? お互いに並んで状況を見ているようだが。
『私たちの司令の為にも、お願い』
日向の通信に思わずドキッとして冷や汗が出た私。
『私のことは、どうでも良い』
つい口走った。
『……』
何となく日向に伝わった感覚はあった。
元々勝ち目のない演習だ。ここは割切って上手に負けを演じてイベントを盛り上げる方がスマートだろう。その方が大将に顔向け出来そうだし。
美保の赤城さんと日向は元々冷静な子達だ。それを悟ってブルネイの二人と上手く交渉でもして『停戦』に持ち込んだのかも知れない。ある程度イベントが盛り上がったら、さっさと停戦させる。それは一種の『作戦勝ち』だよ。
龍田さんの通信が届いたのだろう。爆撃機を落とそうと砲撃を加えていた金剛たちは急に砲撃を停止した。
『シット』
さすがに悔しそうな金剛。通信には入ら
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