EX回:第10話(改2.2)<第2ラウンド>
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にブルネイの夕立は意図的に着弾を外している。
必死な形相で夕立は逃げ惑う。
『ぽいー!』
その直後を狙って次々と水柱が上がる。結果的に彼女は徐々に主戦場から遠ざけられて行った。
私はふと観覧席に居る相手の提督(大将)を見た……やはり彼は美保鎮守府側の、あまりの弱さに呆気に取られているようだ。いや、それ以上に何か『疑い』の表情すら浮かべ始めていた。
そうだよ。今回の演習だって恐らくブルネイの艦娘と互角の相手が本来居たはずだ。それが何かの理由で来られなくなって……そこに幸か不幸か私たちの部隊が入り込んだらしい。
「あ……」
大将が、こっちを見た。
(やばい!)
私は思わず目を逸らしてしまった。だが私の今の行動は余計に拙かった。
(彼の疑念を深めさせただけじゃないか?)
私は非常に焦り始めた。別に悪いことはしていないけど、こうなってくると針のムシロだ。もはやジッと座って居られない。
だがしかし今、逃げ出したら余計に疑われる。夏なのに冷や汗が出た。さりげなく会場を見回すと憲兵さんも点在しているし。
「やば……」
つい、口走ってしまう。
この夏に境港の神社で憲兵に詰められた、あの嫌な緊張を思い出してしまった。
しかし今さら逃げ出せない。こうなったら仕方ない。私は深呼吸をすると自分の不安を隠すように双眼鏡で再び海上を覗く。
「あれ?」
……ウチの金剛はまだ本調子じゃないのか? やたら小さく見える。もしかして蹲っているのか?
その金剛の前にいるのは妹。
「おい、比叡? 何をやっているんだ?」
思わず呟く。その比叡はブルネイの金剛と比叡の前で両手を広げている。どういう事態だ?
私は慌ててインカムを下ろして通信する。
「おい比叡、いくら演習とは言っても実戦的なものだぞ!」
私も問いかけるが彼女には聞こえないのだろう。敵の前で両手広げ続けている。
(あいつ……)
私は境港の路地で私を庇っていた寛代を連想した。艦娘っていうのは状況によって人間以上に使命感に燃えるようだな。
「あれ?」
振り返ると寛代本人は祥高さんの膝の上に頭を乗せて熟睡中だった。
「寝てるのか?」
もちろん祥高さんもコックリと「船」を漕いでいる。いやこの二人……逆にこの緊張する演習会場の喧騒の中で、よく眠れるよなあ。
健気な比叡が居るかと思えば、龍田さんやこの二人のようにマイペースな艦娘もいる。この落差と緊張で私も混乱しそうだった。
演習している海上では風向きが変わった。水柱の霧が視界を再び悪化させている。
私は急に独りで敵地に放り出されたような孤独感に包まれた。もちろん私も軍隊生活は長いから、様々な危機的状況は通過し
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