0204話『秋の作戦名で時雨は思う』
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私は大本営から送られてきた電文を見て予想通りというかやはりか……という感想を抱いていた。
それなのでちょうどよく執務室に来ていた時雨にその事を話すことにした。
「時雨、少しいいかい?」
「なんだい提督……?」
時雨は秘書官用の椅子に腰掛けて今はこれといって忙しい任務がないために読書をしていた。本を閉じながらも私の方に向いてくるのを確認して、
「大本営からとある情報が届いた。覚悟して聞いてほしい」
「ッ! ついに来たのかい?」
時雨の表情はそれで少し引き締まる。
「ああ。秋の作戦名は『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)』という銘を打たれた」
「やっぱり、そうなんだね……」
それで時雨は表情を少し暗くしてなにかを思っているのか拳をギュッと握りしめている。
そんな時雨に話を続けるのも酷だけど敢えて続けようと思う。
「時雨……そんなに思いつめるなよ? 前にも言ったと思うけど無謀な特攻なんてさせるつもりは毛頭ないから」
《そうですよ。だから時雨、落ち込まないで》
「うん。大丈夫だよ。提督に榛名……僕は平気さ」
そう言いながらもどこか体を微妙に震わせている時雨に私は手を握ってあげる事にした。
「あっ……提督?」
「大丈夫だ。大丈夫だから……私を、そしてみんなを信じてくれ。もう西村艦隊のような悲劇は起こさせない。だから……」
「…………うん」
それで次第に時雨の手の震えは収まってきた。
ふと時雨の顔を見てみるとどこか安らぎのような表情を浮かべていた。これって……。
「僕は……幸せ者だね」
「急にどうしたんだ?」
「うん……僕は過去に佐世保の時雨とか言われているのは知っているでしょう?」
「まぁ……」
「だけどそう言われるまでに僕はたくさんの悲劇をその目に焼き付けてきた。仲間達がどんどんと沈んでいく中、僕は運よく生き残ってきた……。だから本当だったら提督だってそんな厄介者は使いたくないと思うはずさ」
「そんなことはない!」
私はつい大きい声を出して時雨の言葉を否定してやった。
そんなことは無い。時雨だってそれだけ辛い思いをしながらも最後には沈んでいったのを知っているから……。
「そんなことは無いんだ……時雨だって大切な仲間だ。だからそんな悲しい事を言わないでくれ」
「うん。提督ならそう言ってくれると思っていたよ。だからさ、僕はそんな僕の事を厄介者扱いしない提督だからこそ存分に力を振るいたいと思うんだ。それはきっと西村艦隊のみんなも一緒……そしてこの鎮守府のみんなのほとんどの総意。榛名だってそうだろう……?」
《はい。提督の為でしたらどこまでも力をお貸しします》
そんな時雨と榛名の言葉に私は胸が熱くなるのを感じた。
「まったく……
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