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世界をめぐる、銀白の翼
第六章 Perfect Breaker
Punish Breaker 〜綺堂唯子の物語〜
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く光の羽根。
色は鈍い赤。怒りを記す色。

赤銅

その彼女の声がだんだんとはっきりして、うすぼんやりと姿まで映しだす。


『だからこそ、吾は主が本物だと思うし、そうでなければ納得せん。仮にブレイカーが本物だとして、そっちの方に手を貸すつもりはないでござる』

嘗ての戦いで。
彼女に向かって明確に、自分の敵だと向かって来て、一番惜しいところ目で追い詰めたのは、他でもない彼女だった。

だからこそ、他でもない彼女だからこそ


『吾が認めるのは其方だけでござる。どんな理由があろうとも、吾にとっての綺堂唯子はただ一人』

そして、決して質量のないその手が唯子の肩に添えられた。


『この者こそが、綺堂唯子ぞ。この赤銅の翼が、ただ一人「友」だと言える存在なるぞ――――』

瞬間、彼女を形作っていた粒子が渦を巻き、唯子の身体に溶け込んでいく。
唯子の全身を包む気力の光に、赤銅の色がボンヤリと灯る。


「そんな・・・そんなそんなそんな!!!私だって綺堂唯子よ。私が綺堂唯子なのよ!!なのになんで――――みんな揃って寄ってたかって、そっちの方を選ぶのよ!!!」

激昂。
叫び、頭を抱え、更に掻く。
バリバリと髪を乱しながら叫ぶブレイカーに、唯子の口を借りて赤銅が語る。


『簡単じゃ。主は自らの道を行こうとせぬ臆病者だからでござる』

自分の道を、胸を張って突き進む。
それが愚かであろうと、無謀であろうと、決して恥じず、あきらめない。


それが綺堂唯子の美しさ。
それが、彼女の強さである。

『お主はただ「もしも」を追い求め、その幻想に縋り付く亡霊にすぎぬ。お主はそこから続くであろう自分の道を捨て、今を生きる綺堂唯子に憧れただけに過ぎない』


そう。
今の綺堂唯子が、これからの道は自分の物だと叫び、そしてその先を生きようとしたのと同じように。
この彼女にも、そう叫んでゆくことのできる道があったはずだ。


綺堂唯子は一人しか存在できない。
その座の奪い合いは構わない。

だが、そうする以上は自分の道を行かねばならない。


これまでを生きてきた綺堂唯子の席に、ブレイカーたる綺堂唯子にも彼女としての道があるのだろうに、すっぽりと収まるだけなど赦されない。


「もしも」「もしも」と、仮の過去、仮定の現在、予測の未来を語ることは誰にでもできる。
だが、それに囚われていては進展などありようもない。

ブレイカーはそれに捕まった。
その仮定を追い求め、それを実現した自分がいて。ただ彼女は、それを奪い、挿げ変わろうと舌だけの存在。




「私は自分に後悔はしない」

反省はしよう。
振り返りもしよう。
涙も流そう。

でも

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