暁 〜小説投稿サイト〜
世界をめぐる、銀白の翼
第六章 Perfect Breaker
五翼 凶襲
[5/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だが、それでも抜ける。
翼刀の跳回し蹴りが腕の隙間を潜り抜け、蒔風の頬に叩き込まれた。

グンッ!と体を引かれるように後ろへとすっ飛ぶ蒔風。黒板に背中から突っ込み、壁に穴を開けて隣の教室へ。


それを追って翼刀が駆けこむが、それにタイミングを合わせて眉間へと突きを放ってくる。
一瞬を見逃さない蒔風だが、それを言うなら翼刀もである。

咄嗟に上半身を後ろに反らして突きを回避した翼刀は、そのまま両脚を地面から離した。
というより、両足で蒔風の腕を挟み込んだ。

そして腕をつかみ、そのまま地面に落ちる。

簡単に言うと


「っしゃぁ、腕ひしぎ取ったァ!!」

「なめるな!!」


腕に一瞬痛みが走り、しかし蒔風が手首を捻って「天」の切っ先を振って翼刀の首に向けた。
対し、翼刀は悔しげに腕を解放してその場から離れる。

ヒヤリととながら喉をさすり、チッと舌打ちして溜息を吐く。


「くそ・・・もうちょいで腕取れたのに」

「やるな。一瞬遅ければこの腕が折られていた」

腕が痛むのか、軽くさすりながら蒔風が翼刀に感心する。
だが、一つだけ解せないことがある。


「貴様、なぜ抑止の力を使わないんだ?」

「・・・」

翼刀は、渡航力による翼人抑止力を発動させていない。
使うのであれば、それはこの空間にではなく攻撃手段に使うだけ。

相手に剣を突き刺して使うつもりだった力だ。


「まさか、さっき一方的にやれたから大丈夫などというバカなことは言わないだろうな、おい」

そんなことはない。
先ほど一方的に殴れたのは、蒔風の身体に抑止力の込められた刃が突き刺さっていたからだ。

それがない今、同じことができるとは思ってもいない。

だが、ならばなぜ翼刀は蒔風に対して何も抑圧を掛けていないのか。


「あんたは、俺たちを救ってくれた一人だ」

鉄翼刀には、多くの恩人がいる。
綺堂唯子は当然、名を上げるべくもなく大切だ。

だが彼女を除いて最初に名を上げるのであれば、失礼ながらも蒔風ショウが出てくる。
彼の言葉に、自分はやっと立ち上がることができた。

あれがなければ、自分はいつまでもウジウジしていただろう。


その次に出てくるのが、蒔風舜だ。
自我を奪われていた時も、そしてそれが解けた後に戦っていた時も、覚えている。

彼は何度も何度も自分と戦った。
倒そうとしてきたことは確かだ。だが、彼は自分を救おうと何度その身が血に濡れようと向かって来てくれた。

その血の多くが、自分の物であると知りながら、なおも。


鉄翼刀はただ一つを除いて何もかもを失った。
そして、また多くを得た。


いつかこの男たちの様になりたい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ