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世界をめぐる、銀白の翼
第六章 Perfect Breaker
勇猛の戦士
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んだ。


だが力を持った子供というのは、大人にとっては脅威以外の何ものでもない。
それを感じ取った大人たちがとった行動はただ一つだ。

その子の力を、抑え込んでしまえばいい。
力を抑え、更に自我に鎖をつける。

そうすれば、ただ我々に従順な人形でい続けてくれる。



事もあろうに、このことを提案したのは彼女の親だ。
何より彼女の存在に怯えていたのは、その実の親だった。

そして、彼女は抑え込まれた。

言われたことだけをすればいい。
あれをしろ、これをしろ。



気付けば、彼女は「おい」だとか「これ」だとしか呼ばれなくなった。
そんな子供が、自分の名前を知っているはずがない。


そうして抑え込まれ続けていた彼女。

そのうまく行きように、周囲の大人たちは鼻高々だった。
これで自分たちは安泰だと。


しかし



そんな彼らは、ある冬の日にみんな死んだ。


死因は様々。

潰されて圧殺。
引きつぶされて轢殺。

建物が無くなり凍死。
逃げようとして獣に襲われ。
食べ物がなくなり餓死。


無論、彼女の仕業である。

その場に駆け付けた救助隊が彼女を発見した時、彼女はまだ生きていたが搬送先の病院で死亡。
その際に彼女の人格データが記録され、のちに採用されたのである。


それが、彼女の身の上話。




彼女は関わりたがらない。
しかしそれは彼等に抑え込まれていたからではない。

結果的に彼女はおとなしかったが、彼等の抑え込みが成功していたわけでは決してなかったからだ。


そう。
彼女は抑え込まれていた境遇に、不幸だとか不満だとか、そんなことは到底考えていなった。

大人しくしていたのは、彼女自身の意志である。
ただ従っていたのは、それが彼女の利害と一致していたから。
彼女がそれに従っていたのは「そうないと、自分は簡単に人を殺す」から。



彼女は殺したくないのだ。
たが、彼女は本能でわかっていた。

誰かが、何かが自分に近寄りすぎると、どうしても殺したくなる。
全部壊して、何もかもぐちゃぐちゃにしたくなる。

どうしようもない衝動、発作。
だから、それを抑えてくれるのではないかと大人に従っていたのだ。


結果的に、一度も彼女はその衝動を爆発させることはなかった。
あの、冬の日まで。


その冬の日。
大人たちのそれが失敗だったとわかった、あの日。

自分は結局人を殺したし、その時に抱いた感情は

“誰が誰かもわからない。なぁんだ別に大切な人じゃないならいいや――――”



だから、あの場に留まった。
自分はこれ以上生きてちゃいけない。


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