第六章 Perfect Breaker
赤銅 対 飛鳥
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つのは、いつだってこの刃だった。
飛鳥の胸から、小さな光が抽出されるように出てくる。
指先程度の大きさのそれは、しかし紅蓮の炎を超圧縮した輝き。
それを剣で斬ると、炎が一瞬にして溢れ、天を昇って一面を覆う。
浮遊する雲をも巻き込み、そして巻き込まれた雲は悉くが、蒸発する事も許されずに燃え上がる。
その炎の力は、まさしく彼が最強と呼ばれた所以。
有象無象の悉く、森羅万象一片に至るまで、この炎は逃れることを許さない。
触れれば即、其れ即ち炎上。
炎が灯るか灯らぬか
焼けるものなのかそうでないのか
そんなものは関係ない。
この炎は、世界が生まれし時に常世全域を駆け廻り、終焉の時に全天全地を覆う劫火。
何ものであろうとも、焼ける他の選択等、在りはしない。
燃え上がった雲は霧散することもできず、落下して地上を焼き払う。
落ちる雲は燃え尽きず、すでに天より降り注ぐ炎の嵐。さながらこれは、隕石群。
かつて、罪と呼ばれ滅亡した、二つの街を焼いた火の嵐。
空の色は蒼を失い、黒に染まることもなく、只々一面の炎の空。
これはその再現だ。
否。もはや再現というほどには足らず、きっとこれは、その神罰そのものなのであろう。
この下が海上でなく地上であったならば、恐らく今回の戦いで一番の被害であったはず。
彼はこれを以ってして最強とされた。
如何なる敵であろうとも地上一切を焼き払い、彼より高く飛ぶ者はいなかったのだから。
彼が本気を出せば、大気圏の外にちょっと飛び出た程度では行動を制限されることはない。
故に、最強。最も高い位置に座し、そしてそこより下にいる者をすべて焼くのだから。
だが、しかし
こんな炎の隕石群など、彼が技を放つ為の「準備」に起こる現状に過ぎない――――――
剣の切っ先に、劫火が集う。
熱は剣身を真っ赤に染め上げ、切っ先に溜められたはずの炎は溢れ出てその刃を覆う。
切っ先に圧縮しきれていない、というわけではない。
必要分の炎を圧縮すると、どうしても溢れるカス。それがこの炎だ。この雲を焼き、隕石に変貌させるのもその一片に過ぎない。
余波でこれ。
ならば、この剣での一撃は一体どれだけの――――――
「この炎は原初にして終焉。世界の始まりに炎が奔り、世界の終わりに炎が猛る」
冗談にもほどがある。
この技をかつて見たことがある赤銅だったが、これほどの威力ではなかった。そのとき彼は「デモンストレーションだよ」と言った。本気でやればそれどころではない、と。
その時は本気にしなかった彼女だが、今更になってその言葉を思い出す。
そしてそれは、本当だっ
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