なよ竹のランタン
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のようです。さすがにちょっと明る過ぎやしないか、という意見がようやく出始め、皆の仕事が終わって最後に寄合所を出る者が黒い布を掛けて帰るようになっていました。まだ少し明るいですが、全く問題はありません。
村は少しだけ豊かになりましたが、今までが貧乏過ぎただけで基本的にはごく普通の村です。娘たちの美しさも平凡で、まかり間違っても村の娘を見染めた都の貴族が押しかけたり、帝が通い詰めたりなどしません。讃岐の造もいつしか50歳を超え、老眼が進んできて手元が視えにくくなってきました。光る竹は相変わらず明るいですが、今まで通り竹細工を作り続けることが少ししんどくなってきたのです。幸い、その頃には竹細工の分業化が進んでいて、竹を取る人、細工をしやすいように竹を割る人、細工をする人に分かれていたので、讃岐の造は比較的フレキシブルに、竹を取ったり、竹を割ったりしていました。
それから少し経ったある冬の日、連日の乾燥のせいでしょうか。竹の表面にヒビが入ってしまいました。ヒビの奥から、まばゆい光が漏れ出てきています。
「まぁまぁ…休みなく毎日光っているから…」
気の毒に思った妻は、米を練ってノリを作り、ヒビを埋めました。他にもヒビが入りそうな場所は、丹念に補修しました。これで当分は大丈夫でしょう。妻は安心して、竹に布をかけて寝てしまいました。
ある満月の夜、久々に家に持ち帰った光る竹を磨きながら、讃岐の造は、妙なことに気が付きました。
竹の中から呪詛にも似た呻き声が聞こえてくるのです。縦に大きなヒビも入っています。呻き声らしきものはすぐに終わりました。最近耳も遠いので、婆さんの屁でも聞き間違えたのだな、と独り言を云って立ち去ろうとしたその瞬間です。
竹が雷のような音を立てて真っ二つに弾け飛び、中から光り輝くような美しい女が現れました。
「あ…あ…」
余りの事にどうしていいのか分からず、ただ尻もちをついて光る女を見上げて震える讃岐の造を物凄い形相で睨み、女は大音声で叫びました。
「開けろやぁああああ!!!!」
同時に縁側に光が差し込み、ひとかたならぬ美しい衣を纏ったみ使いが大勢現れ、何やら微妙な表情を浮かべて、光る女に羽衣を差し出しました。女は物凄い勢いで羽衣をひったくるとさっさと光る雲に乗って一切振り向くことなく月に吸い込まれるように立ち去ってしまいました。
事情が分からない讃岐の造は、一人もたもたしていたみ使いに『これはどういうことなのか』と尋ねました。聞く所によると、竹の中に入っていた女は月の都の者で、罪をおかして下界に降ろされていたとのことです。…つまり、女囚だったのです。
「あの女は、何をしたのですか?」
讃岐の造が訊きますが、み使いは微妙な表情を浮かべるばかりで語ってはくれません。ただ、光る女がこ
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