第27話「ユイとスクワラとエリザと……」
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大方、俺が危険な存在ではないとテトは犬達に伝えているのだろう。
それがどうして俺を大勢で囲みもみくちゃにすることへと繋がるのかは理解できないのだが、一体テトは彼らに俺の事をどう説明したのだろうか?
「どうなってんだ、こりゃあ?」
中庭の出入り口から男の驚く声が聞こえて、犬達に視界を塞がれる中で隙間から相手を確認すれば、この子たちの主人であるスクワラであるのが分かった。
「わぷっ……あの……助けてくれると、大変……ありがたいの、ですが……」
時間が経つごとに、俺の視界が犬で覆われていく中で、どうにか救援要請を出すことに成功する。
いや、冗談抜きで助けてほしい。
9歳児の体なんて大型犬に囲まれれば簡単に埋まってしまう。犬に溺れて窒息しかけてるとか冗談でも笑えない状況だ。
「は?まさか、そこにいるのは嬢ちゃんか!?」
「……ん〜っ」
これ以上、下手に口を開けると毛やら何やらが入りそうなので、どうにかして右手を空に向かって精一杯伸ばすことで自己主張をしておく。
傍目から見たら、犬の塊から伸びる幼女の腕とかホラーに見えそうであるが、当事者である俺には助かるのならどうでもいいことだ。
幸いにも、すぐに状況を理解してくれたスクワラが犬達に“命令”することで俺はようやく新鮮な草の匂いのする空気を吸い込むことができた。
ただ、髪はボサボサで、服は大いに乱れ、顔は犬の涎まみれと……第三者に見つかったら、駆け寄ってくるスクワラに冤罪がかかりそうな感じである。
「おい。大丈夫か」
「ん……何、とか……」
さすがに自分の犬達のしでかしたことだからか、グッタリしている俺を抱き起すしてくれると、涎塗れになっている顔を手持ちのハンカチを拭ってくれる。
顔を拭われるのは予想していたよりも恥ずかしくて、それを誤魔化すように手ぐしで適当に髪の毛を整えて、乱れた服は軽く汚れを払い落としてから直す。
――――こんなもんかな?
「はぁ。報告通りだな」
「?」
「ちょっと後ろ向け」
スクワラは懐からシュシュのような物を取り出すと、適当に直した俺の髪の毛を手慣れた手つきで整え直すとシュシュを使ってサイド結びみたいな感じにセットしてくれた。
片方に髪の毛が寄っているセットはしたことがないので、何となく気になってチョイチョイと触りつつ視界の端に映る淡いピンクのシュシュを見て、ふと思う。
「なんで、こんなの持ってるんですか」
「偶然だよ」
「……そうですか」
「お前、また変な誤解してるだろう」
「いえいえ、女装趣味があったんなんて思ってませんよ」
「誤解してるじゃねぇか!!」
凄い良い人だ。
初対面時に思い出した映
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