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キコ族の少女
第12話「旅立ち」
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 何の感じない真っ暗な世界……

 立っているのか、座っているのか……

 上下左右の感覚……

 暑さや寒さも……

 何も感じない真っ暗な世界……

 そんな中に俺は目を瞑り、耳を塞ぎ、体を丸め、ひたすら目が覚めるのを待った。
 これは、俺の夢……そう自覚できるが、自分の思い通りには出来ない夢。


―――ロシッ


「……っ」


 微かに聞こえた声のようなものに、俺の体が強張った。

 ”アレ”がきた…

 そう思い恐怖すると同時に、もう少しで目が覚めると小さく安堵する。
 が、すぐに気を引き締め”アレ”に備える。
 
 そして……


『痛い、痛い……身体が焼けるようだ』
『ああ、血が止まらない』


 聞き覚えのある二つの声が俺を取り囲むよう反響し包み込んでいく。

 一つは、初めて殺した男。
 一つは……


『ああ、憎い、憎たらしい……この親不孝者め!』


 前世での父親……いや、あの生き物は親ではない……あってなるものか……
 あいつは、あの汚物は……!!


――――――――――

――――――――

――――――

――――

――


バチッ

 そんな音が出そうなほど、勢いよく目を開く。
 ここ数日で見慣れた天井が目に入り、現実に帰ってこれたのだと自覚する。
 目が覚めた後は、普段ならノブナガと俺の二人分の朝食を作らなくてはならないのだが、今は両腕にはギプス、首と胸と足には包帯が巻かれていた。


「ははっ、どこの重傷人だよ」


 テレビの中でしか見たことのない自身の姿に、思わず苦笑してしまう。
 実際に重傷なのは分かっているので最初は大人しくしていたのが、ある程度まで傷が癒えてくると痛みの代わりに熱さとムズ痒いだけになり、休養にも飽きてしまったので暇が苦痛になってきていた。
 ならばと、念の修行をしようにも「許可するまで修行禁止」とノブナガから言い渡されており、出来ることは“絶”による回復促進くらい……。

 まあ、駄々をこねても怪我をしているという事実は変わる訳もない。
 それに、今日こそは”あの人”が来る前に汗で濡れた服を着替えようと、体を起こしてパジャマ代わりのTシャツに手を掛けたる……が、


「また、無理して着替えようとする」
「うっ」


 時既に遅し……呆れつつも若干の怒気が混じっている声が、俺の背後から響いた。
 それに対して、俺は油が切れた機械のようにギギギッと首を声のしたほうへ向けつつ、最後の抵抗として何度も使った良い訳を声の主へと伝える。


「きっ今日は、大丈夫……パクは、心配しすぎだよ」


 だが、今日もいつからいたのか仁王立ち
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