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キコ族の少女
第10話「リベンジ-2」
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ほど回避が遅れて一発の弾が至近距離を通過していき、思わず声を上げてしまった。
 念で強化されているとはいえ、ウボォーのように鋼の身体ではないので当たれば普通に怪我をしてしまう。
 先ほどの失血が未だに尾を引いている現状では、これ以上の失血は作戦行動へ影響がでる。

 危ない危ないと、心の中で安堵の声をあげつつ俺と同じように物陰に隠れた二人へと視線を送ると、後ろへと視線を向けたので背後へ意識を向ける。
 すると前からの銃撃音に掻き消されそうになりながらも、微かに複数の足音が向ってきているのが聞こえた。

 シャルは、俺を指差した後に正面にいる弾幕を張っている奴等を指した。
 何が言いたいのか理解できた俺は、頷きを返す事で了解の意思を示し、同時にヒスイを数体顕現させる。
 そして、未だに射撃を続ける前方の奴等に向けて放つと共に、地面を蹴って物陰から飛び出す。


「こ、子供!?」
「油断するな!!」


 シャルの後ろにいたために視認されていなかったのか、俺が姿を現したことで数人の若い兵士が動揺の声を上げて、即座に熟練の兵士から叱咤を受けたのが見える。
 だが、その一瞬の隙に開いた弾幕の隙間に自分とヒスイを捻じ込むと、陸上選手も真っ青の加速をもって彼等に肉薄する。


「なっ!?」
「がっ!?」
「ぎゃぁ!?」
「くそっ!!」


 俺とほぼ同時に到着したヒスイが、熟練の兵士の腕に突き刺さり射撃能力を殺ぎ、若い兵士二人には俺の飛び蹴りをモロに喰らい吹き飛ぶ。
 少女ではあり得ない身体能力に無事だった最後の兵士が汚い言葉を吐き捨てつつも、俺から距離をとりつつ腰にある拳銃の銃口を俺に向けてトリガーを……引こうとした。
 自意識過剰といわれるかもしれないが、一応“美”をつけていい容姿の俺を撃つのに抵抗があったのか、それを抜きにしても女子供を撃つことに抵抗があったのか、一瞬のタイムロスを作り出してしまった。
 故に、俺は悠々と射線上から離脱すると共に熟練兵を攻撃した後で待機状態になったヒスイと、新たに顕現させたヒスイを残りの兵士へと向けて放った。
 二体は、寸分の狂いもなく残った兵士の両腕を貫通し、トドメに俺の蹴りを腹部に受けて吹き飛び、壁に激突して沈黙した。


「まあ、こんなもんか」


 特に手が汚れているわけではないが、手の平を擦るように叩きながら周囲を見渡す。
 誰も死んでいないのは殺すという行為に抵抗があるためではなく、情報収集するために生かしたまま戦闘能力を奪っただけに過ぎない……と誰に対してか判らない言い訳を脳内で展開する。
 さて情報収集でもしようかと、負傷したことによる痛みで呻き声あげている彼等へ近づこうとした時、チリッと首筋に感じた違和感から反射的にその場を飛び退く。
 
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