第7話「初仕事-2」
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言で座り続けている。
そんな静まり返った部屋。
沈黙に耐え切れなくなった俺は、ポツリと掠れた声を漏らした。
「呆れてる、よね?」
「……」
沈黙。
それは俺の言葉を肯定しているようで、現在も流れ続けている涙の量が少し増えた気がした。
泣いている声を聞かれて、さらに呆れられたくなくて必死に声を出さないようにする。
前の俺だったら人前で泣くことはなかっただろう。
もう殆ど残っていない冷静な俺が前世の自分を思い出しながら、そんな見解を述べる。
「何勘違いしてんのか知らねぇが、俺が何時”呆れた”って言った?」
「だって……だって、皆の足を引っ張ってばかりで……」
「そんなもん誰も気にしてねぇよ。それに、お前が上手く仕事が出来るとは思ってねぇ」
「―――っ」
それは……期待されてないってことなの?
ノブナガの言葉に、心が鋭利な物で抉られたような感覚を覚えて、腕の出血は止まっているのに貧血のような眩暈がして倒れそうになる。
「初めてで上手く出来る奴なんざぁ、そう簡単にいてたまるか」
「……ぇ?」
思わず顔を上げると、俺を見ていたのかノブナガと目が合った。
が、それも一瞬だけで、フンッと一息ついた後に前を向いて彼は言葉を続ける。
「仕事をする前に言ったはずだぞ、空気に慣れろって」
「……うん」
「今回の失敗は、数をこなして慣れるしかねぇんだ。だから、落ち込んでんじゃねぇよ」
「わぷっ!?」
顔に叩きつけられたタオルで視界を塞がれため確認できなかったが、ノブナガが笑っていた気がした。
「それに、お前はまだ発展途上なんだ。これから強くなるのに、こんな所で立ち止まってるのか?」
「……ううん!!」
突き放すような言葉の中から見え隠れする彼の優しさに、自己否定していた俺が消えていくのを感じる。
何度目になるだろうか?
この世界で暮らすようになってから感じる、漫画で知っている彼とは違う一面に、つい頬が緩んでしまう。
「何笑ってんだよ」
「いたたたたっ!」
頭にゲンコツをねじ込まれて思わず悲鳴が上がるが、顔はニヤけたままだった。
そして気づいたときには、さっきまで自分を支配していたあの感情が消えていて、変わりに”強くなって見せる”という意気込みが俺を支配していた。
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