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キコ族の少女
第7話「初仕事-2」
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0秒。
 旅団の皆からすれば長い時間が過ぎているが……って、シャルとマチは?
 
 意識を分散できる程度に余裕が生まれたことで、いまさらになって感じた疑問からくる隙を狙い済ましたかのように、それは起きた。


「っ!?」


 腹部に何かが巻きつく感覚と同時に、そこを基点として身体が後ろへと大きく引かれた。
 こんな僅かな隙を狙われた事に驚きながら、腹部へ視線を移すと細い糸―――マチの念糸が、俺に腹に巻きついている。
 敵の攻撃でない事に安堵すると同時に、なんで俺を?と思ったのも束の間、後ろへ引っ張られた先にいたシャルに抱きとめられ、俺を脇へ抱えると保管庫へ一直線に走り出した。
 一瞬のタイムラグがあったものの、 テトも俺たちの後を追っている気配を感じる。

 この突然の事態に呆然としていた俺だったが、すぐに正気へ戻ると俺を抱えているシャルに憤りを隠せていないだろう口調で声を上げる。


「なんで!?」


 感情が先走った為に、様々な意味を含めた単純なこの言葉に、シャルも一言で返す。


「ユイじゃ勝てないよ」
「……っ!」


 その一言が沸騰していた思考を急速に冷却し、さらにズシンと体全体に重く圧し掛かる。
 ……分かってる。姿は見てないが相手と対峙したことで感じた相手の力量は偵察した時よりも強く、そして圧倒的で、力の差は歴然であると思った。
 でも、敵の一撃目を回避する事は出来た。ならば、やりようによっては……


「それに、気付いてないのかもしれないけど。今のユイは”纏”すらマトモに出来てない」


 え?と、自分の手を見ると所々に穴が開いているみたいにグニャグニャと不安定なオーラ、顕現させていたはずのヒスイも自動操縦(オート)の場合は、俺の移動に合わせて追随してくるはずのなのに、いない。
 さっき攻撃だけで動揺し、上手くオーラを操作できる精神状態ではなくなっている自分。
 ノブナガを師匠とした修行の成果すべてが無駄であると言われているようで、言いようのない悔しさが俺の心を支配した。

 結局、その後はマチが壁に隠れていた能力者を、シャルは保管庫を見張っていた能力者を短時間のうちに始末。
 ノブナガとウボォーも、多少の返り血による汚れを除いて建物を壊すことなく、警備していた人間をすべて片付けて、たぶん呼ばれている増援が来る前に金目の物を持って撤退した。
 その間、俺がしたことといえば周囲の警戒と強奪品を運搬する手伝いのみ。
 初の実戦ということを考慮しても、到底満足できるはずもない。
 それどころか、俺が壁から脱出するときに粉砕した壁が契約違反だと、依頼主からのクレームが来てシャルに余計な仕事をさせてしまった。

 初めてということで緊張していたのは確かだけ
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