EX回:第9話(改2)<バトルの裏で>
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と私が同類に見られているようで恥ずかしさと同時に、ちょっと言い返したくもなった。
「お前は私の『妄想監視係』か?」
すると彼女はニタリと笑って頷いた。
「……負けたよ、お前には」
私は肩をすくめた。
この寛代という駆逐艦娘は不思議な子だ。空気のように無色透明かと思えばスパイスのように刺激を受けることもある。
(ちょっと他の艦娘とは違うよな)
思えば僅かな期間しか美保の艦娘たちとは接していない私だが、それでも異質なものは感じるのだ。
それを言えば秘書艦も、ちょっと特異なものを感じる。
……ただ彼女の場合は時おり『押し』が強いだけで基本的に物静かだ。それが普通でない印象を打ち消して居るのだろう。
そんなことを考えている間も会場は盛り上がっていた。
私は改めて双眼鏡で観客席を見た。すると歓声の中で左手の席に青葉さんと夕張さんが居るのが分かった。その青葉さんも、やはり大きなレンズのカメラを抱えて満足そうな顔をしていた。
「収穫あったようだな」
『はい、ばっちりです』
私の声に反応するようにこちらに視線を送る彼女。
「あれ?」
一瞬、驚いた私を見透かすように向こうの席からこちらにブイサインで手を振る青葉さんが見えた。
「そうか、このインカムの周波数はお前も拾えるのか」
『そうですね』
いつもの彼女の声が返ってくる。妙にホッとした。
するとその隣の夕張さんが何か私の方向を指差して盛んに何か訴えているようだ。
「何?」
彼女の視線の先……ふと双眼鏡を外して後ろを振り返る私は声を出す。
「あれ?」
傍の椅子では秘書艦の祥高さんが居眠りをしていた。
さっき『物静かな艦娘』だと思ったが、こうなると、もはや存在感すら感じない。私は苦笑した。
「君は、こういうバトル系は興味ないんだな……それとも長旅の疲れが出たのかな? まぁ、お疲れ様ってか」
私が呟くと隣の寛代が、そっと祥高さんの腕にしがみついた。
その姿があまりにも自然に見えて一瞬、家族かと思えた。
「まさか……」
何か、その行動に不思議な法則性を感じたのだ。
(艦娘は全員、こうなのだろうか? それとも……)
向こうの会場に座っていた青葉さんたちは立ち上がって移動を始めていた。その姿を見て私はふと、あの技術参謀のことを思い出した。
(そういえば彼女、どうしているだろうか?)
当然、医務室で大人しくはして居ないだろう。
……とはいえ演習会場にノコノコ顔を出すヘマはしないだろうし。
(どこで何やってる?)
私は、ちょっと心配になってきた。
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