EX回:第9話(改2)<バトルの裏で>
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『……っぽい!』
霧や煙が晴れてきた海上ではその浴衣姿の『夕立』が得意げに決めのポーズを繰り出していた。
実況席も叫ぶ。
『決まったああぁぁぁ! 夕立のハイキックぅ』
「ハイキック?」
待て待て、相手は浴衣だぞ? どうすれば、そんな攻撃が可能なんだ?
会場にはブルネイの艦娘たちの「通常音声」が『中継』されている。
当然だが……演習は彼女たちの勝利に終わったようだ。
さすがに私は美保の艦娘たちが心配になってきた。しかし視界が開けず、まだ様子が分かり難い。
その時、私のインカムに現場の生の声が伝わって来た。
『ねぇ……大丈夫っぽい?』
ブルネの夕立の声……その小さい声音を聞いた私は直ぐに思い出した。
「そうか」
私は安堵した。
(裏事情があるんだった)
そう。この祭りの影では真逆のことが進んでいる。
まず美保の龍田さんが抑えた声で呟く。
『あぁーあ。ワタシ最近、あまり受身取って無いのよねえぇ。訓練不足で……久々に来たわぁ……でも大丈夫よ。意識はちゃんとしてるし』
彼女はは小声で続ける。
『直ぐに立つとバレちゃうから……ちょっとジッとしているわね。だから慌てないで頂戴」
『はい』
海上の現場からは相手の夕立と龍田さんの安堵するような吐息が伝わってきた。
バトルの真実を知るのは戦闘中の特殊無線を傍受できる一部の艦娘たちと通信担当。あとは私くらいか。
(お客さんたちは、知る必要も無いけどね)
もちろん、お互いの艦娘たちも、このことは一切、口外しないだろう。
それは「政」を司る者たちの不文律であり一種のマナーだ。
ブルネイの夕立が、こちらの方を振り返る。
『ねえねえ、会場……すごい歓声っぽい』
『うまくいったようねー。きっと提督も喜んでくれたわね』
午後の日差しを全身に浴びながら海上で手を振っているブルネイの夕立と龍田さん。
私は観覧席で頬杖を付きながら思った。
演武とはいえ、ちゃんと相手を気遣いつつ見せ場も作る。その上で大将の顔も立てている。ブルネイ側の艦娘たちは量産型にしては要領が良い。
中心である大将を想う賢明で優しい艦娘たちだな。
(やはり日頃の指導が行き届いているのだ)
軍隊に必要な秩序が立っている。
(うん、本当に羨ましいな)
翻って今もなお艦娘たちに翻弄され振り回されている私は、まだまだ未熟者だと、つくづく反省。
異様な熱気を感じてふと周りの観客席を見ると青葉さん並みの凄いカメラを持っている野郎どもが居た。彼らは『決定的な瞬間』を撮ったのだろう。満足したように鼻の穴を膨らませていた。
「……」
さらに視線を感じて振り返ると寛代が見ていた。あいつら
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