外伝・もっとも穢れ無き物語
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々世界に対して冷め切っていたわけでもなければ、その考えを長い間聞いてきたわけでもない。ただ突発的に絶望し、変状しただけ。故にこそこれまで自分が過ごしてきた街への思い入れも、平和に今を生きる人々への思いやりも、無意識下に残っていた。
では、なぜ先ほどは躊躇うことなく攻撃を放ったのか。その答えは単純、ランサーがいたからだ。ランサーが憎く、ランサーを殺したい。その願いだけは、何よりも優先される。仮にクラスを当てはめるとしたら狂戦士。狂化のランクは例外種のEx。
と、そんな性質を持っているのだが。それは全てではなくともおおよそ見抜かれている。変状後の口上、そこからランサーへのただならぬ恨みは明確だったのだから。だとすれば……彼が実行する作戦は、決まっている。
「これは聖杯戦争だ。故に謝罪はしない、いくぞセーレ―――」
その俊足でもって柱の意識の外側から、一瞬で射程圏内へ。
柱の現れた場所は狙って蹴落とした、人気のない空き地。多少周囲への被害が心配だが、これを放置することに比べれば許容範囲だと判断。圧倒的強敵に向けて、初撃から全力を撃ち放つ―――!
「突き穿つ死翔の槍!」
放たれたるは対軍宝具、全力に全魔力、魔槍の呪いを最大限発揮した投擲。命中させるなどというチマチマしたことは考えず、その威力を持ってもろとも吹き飛ばす、大伸宣言をも上回る圧倒的な暴力。
的は一つであるために分裂する必要もなく、赤槍はその柱を削る。その威力、その光景は見るものすべてにランサーの勝利を確信させるが……本人は、そんなこと考えもせずに走り出す。槍は勝手に戻ってくるという信用と今の一撃では倒しきれないという確信が、躊躇うことなく一時撤退を選ばせた。
他にも英霊がいれば、このまま玉砕覚悟で削りにかかる選択もあった。だが、今は一騎でも失われたら敗北が確定する。可能な限り確実なヒットアンドアウェイ。それがこの状況を乗り切る最低条件である。
しかし、当然のこととして。標的が現れたのなら照準を定めないはずもなく。柱はその目を輝かせて―――無数の矢によって撃ち抜かれる。
弓矢作成スキル。それによって空中に作り出された無数の矢が、意識のそれた瞬間に降り注ぐ。ヒットアンドアウェイを実行するのに必要なのは攻撃担当が確実に逃げ切ること。その為の手段として、アーチャーの矢でもって視界を封じる。
もちろん、この相手が普通の魔神柱であったのならこの程度の策で乗り越えることはできない。ほかの魔神柱であったのなら魔神としての意識を持ち、生きてきたがゆえにその戦い方も身についている。では今回はどうだったか。
答えは単純、完全なイレギュラーであった。突発的に起きた事態、それが相手に同意させるに足るだけのものであったために、突発的に行われたこと
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