96美汐と真琴の悪夢の終わり
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択をした。
「真琴、辛かったよね、私が暖めてあげる……」
人一倍心の弱い美汐には、もう常の心を保てなかった。
「一緒に丘に帰りましょう、あそこならまた、あの子達と会えるかも知れない、私を導いて…」
すでに生気の無い、虚ろな目をした美汐は、真琴の亡骸を抱き上げると、一人歩いて行こうとした。
「おい、待てよ美汐、どうするつもりだ!」
もう祐一の声など聞こえず、止める手を振り解いて歩き続ける美汐。
「やめろっ! もう止めてくれ!」
思い出の童謡を歌いながら涙を流し、遠いあの世を見る目で、丘から繋がる異世界を見る。
そこなら自分達は友人同士や姉妹として過ごし、同じ狐として丘を駆け回れるかもしれない。
もう美汐の目には、夕焼け空と、ものみの丘以外、何も見えていなかった。
天乃御渡神社
丘にある数個の神社、それは神域への入り口を守っている場所でもあり、ケガレを持った普通の人間が入れば直ちに死ぬ場所でもある。
「おばあちゃん……」
美汐を迎えるように待っていたお婆さん。事件の概要も知っていて、孫が狐の亡骸を抱いてこの場所に来た意味も理解していた。
「辛かったのう、もう良い、狐様の亡骸はわしが返す、もうええ」
祐一が存命で狂ってもいないので、この世で添い遂げられるよう願い、天罰を受けるなら自分が受けて真琴様を丘に返し、孫は曾孫を産んで子孫はこの世で繁栄してほしいと願う祖母。
しかし孫の表情は、以前と同じ生命を失ったような目をして、死を達観していた。
「違うの、もう私も誰かの使い魔に憑かれてしまって、食べられてしまったのよ、1月もしないで真琴と同じになる、だからお別れなの」
「なんとっ、お前にまで使い魔が……」
それ以上話さないでも、お婆さんは使い魔に憑かれた者が助からないのも知っていて、一族上げて美汐だった物を成敗しないで済むよう、自ら神域に入ってケガレを消そうとしているのだと分かってくれた。
「うん、ごめんね、今まで苦労ばかり掛けて。もうすぐ曾孫の顔も見せてあげられると思ってたのに、だめだったっ… ごめんねっ」
真琴の亡骸を祐一に預け、最後の抱擁をする祖母と孫娘。
「恨みますぞ、婿殿」
妖狐とも縁があるお婆さんなので、一連の事件を起こしている天使の人形の気配が、祐一と同じなのを感じ、これもまた災厄だと知り孫の婿を恨む。
「じゃあお婆ちゃん、扉を開けて。これから私達、神域に入るの。この世では結ばれなかったけど、あの世で、神域に繋がる別の世界で結ばれるの」
「ああああっ、美汐っ、美汐〜〜〜〜っ!」
授かる幸運と悲劇も表裏一体、ほんの紙一重の差で、別れと苦しみと破滅が訪れる。
得られる栄耀栄華と共に災厄が降りかかる。飢えることは無くなった天野の一族だが、ほんの一月の逢瀬や、あゆを呪い殺し
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