96美汐と真琴の悪夢の終わり
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
止められる体になってしまっていた。
「ゆうくん」
今生で一度結ばれただけの運命の少年に別れの言葉を紡いだ美汐。
階層も低い妖狐で恋愛の成就に降りてきた人魚姫、残りの余生と力を全て使い切って、たった一月の逢瀬を楽しみに来た相手を闇に返す。
『天への罪赦し給え、安らかに眠れ』
背後に回ろうとした真琴を抱き締め、額に札を貼り、背中から刺す。
『アアアアアアッ!』
背後を狙ってきた対象者を、肋骨の隙間を通して心臓を刺し、続いて頚椎や脳も後頭部から刺す。
女の力で刺突の勢いがなければ、自ら倒れ込んで相手の体重を使って刺す。同衾した夫や妻を闇に返す為に、抱き合ったまま心中する、天野に残った作法である。
「真琴…」
「あ、あ、ああっ」
急所を魔物の腕力で何箇所か刺された真琴だった物は、魔力を失って砕けて行き、元の状態に近付くと泡になって消えて行った。
残った亡骸は、元の狐の姿になって倒れていた。人間世界なら片付けられることもなく、野犬やカラスに死体を食われるか、保健所や清掃員が破棄処分するただの狐の死体になった。
「美汐っ」
真琴の亡骸を抱いて倒れていた美汐は、祐一に抱き起こされたが、以前と同じ焦点の合わない、死んだような目に戻っていた。
「ありがとうございます、祐一…様」
「やめろっ、そんな呼び方するなっ」
「はい、では相沢さん…」
さしもの美汐でも、妖狐と人間の違いを思い知り、ほんの一ヶ月ほどの逢瀬の後は、鬼で悪魔で化け物で魔物に変化する生き物は、天に返すか地獄の闇に送り返さないと、災厄を振りまく存在になるのだと知り、妖狐との別れを決心していた。
そして、自分自身も誰かの使い魔である魔物に魂まで食われ、滅ぼされるべき悪鬼羅刹に成り果てているのも知った。
もう子供を成すのも諦め、祖母や親族の手を煩わし、死傷者まで出して討ち果たされる気もなかったので、自害するか、愛するヒトに討たれたいと思った。
「どうか最後のお情けに、私を討ち果たしてやって下さい。妖狐に対する不敬、万死に値します。どうか…」
「やめろっ、お前は真琴を救ってやったんだ、だからっ」
祐一にも心の声で、「私が悪鬼羅刹に堕ちる前に、人として死なせて下さい」と懇願する幼馴染で恋人の声が聞こえた。
選択肢
1,愛する少女がケガレに成り果て、闇に堕ちる前に自分の手で天に返してやる。
2,そんなことは出来ないので、美汐が舞の魔物に喰らい尽くされ、天に返すことも叶わなくなり、地獄に堕ちるのを待つ。
3,美汐と真琴と一緒に行くのなら、天でも地獄でも同行する。
選択 2
「うわああっ、あああああああっ!」
愚かにも祐一は、愛する少女を手に掛けることもできず、美汐が闇に落ちて手遅れになってから次の手段を探すような、最低の選
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ