第5話 帝王の影
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――本来なら戦場ではないはずの、キャンプ地。「RAO」におけるロビーに該当するその場所は今、阿鼻叫喚の煉獄と化していた。
「なんでだよ!? なんでログアウト出来ないんだ!?」
「出してくれよ! 出してぇえぇ!」
「痛ぇ、痛ぇよ! なんでだよ、なんでこんな……!」
逃げ惑うプレイヤー達。その渦中に、意中の少女が紛れていることも知らず。キッドは突然の事態に、思わず固まってしまっていた。
辺りは駆け回るプレイヤー達により砂煙が舞い上がっており、周囲の状況も今ひとつわからない。
「アー坊何してる!」
「……!」
キッドはふと我に帰り、乱射による流れ弾をかわすべく遮蔽物に飛び込む。その頃にはすでに、トラメデスも身を隠していた。
「……アー坊、嬢ちゃんと連絡は取れるか!?」
「ダメです、メニューバーすら開きません! あの時と同じです……!」
「クソッタレめ……。こうなったら『奴ら』を仕留めない限り、事態は収拾できねぇな。行くぞ!」
これほどの大騒動が起きている理由は、わかっている。キッドとトラメデスは顔を見合わせると、匍匐の姿勢で土埃が立ち込めるキャンプ地を進み出した。
(プレイヤー達の逃げる道筋を逆に辿れば、連中の居場所は容易く見つかる。――いたな)
キャンプ地は元々戦闘を想定して作られたマップではないため、通常のフィールドと比べれば非常に狭い。
それゆえ――プレイヤー達の恐慌の原因は、早々に見つかった。2人組の鎧騎士は、逃げ遅れた者や向かってくる者を容赦なく嬲っている。
(アー坊、手筈通りに行くぞ)
(はい。……頼りにしてますよ、先任)
(……こっちもな)
その光景を目の当たりにして、キッドは拳を震わせながらも平静を装い、トラメデスと別れる。衝き上がる激情と戦う部下の背を、男は微笑を浮かべ見守っていた。
――それから、数分。倒れたドラム缶に身を隠したキッドは、土煙に身を隠しつつスナイパーライフルを構え、狙撃の姿勢に入る。
狙うは2人組の片割れ……バシネットの騎士。厳密には、その腰に巻かれたベルトのバックル。
(お前達の凶行もここまでだ……覚悟しろッ!)
コントローラを模した、そのバックルを狙い。キッドは躊躇なく引き金を引く。
僅かでも外れれば、流れ弾となりプレイヤーに当たる可能性もあるが――キッドの指に、震えはなかった。
――決して外さない。その信念に引き寄せられるが如く……銃弾の先は、バックルへと猛進していく。
「……!」
次の瞬間。ウィークポイントに当たれば即死級の威力となる、スナイパーライフルを受け――バシネットの騎士が、金属音を響かせ膝から崩れ落ちていった。
弾け飛んだバックルに、手を伸ばす彼だったが――奮戦虚
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