第5話 帝王の影
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ドとトラメデスは互いを見遣る。
「伏兵がいる気配は感じられませんでしたが……本当に、仕留めているのでしょうか」
「アバターの素顔がわかりゃあ、アーヴィングコーポレーション本社のデータと照合してリアルを調べることもできる。そこまで致命的な情報を、今晒してるんだ。死んだふりでも、まずそこまではやらねぇ」
解析班に掛かれば、アバターの顔だけでもリアル情報を探り当てることは出来る。潜入班の視覚を通して情報を現実世界側に送れば、あとは解析班が全て解き明かしてしまうのだ。
それが可能である以上、素顔をさらした鎧騎士達は完全に制圧した、と言っていい。
自分達の「一先ず」の勝利を確信したトラメデスは、足元に転がっていたコントローラに手を伸ばす。グレートヘルムの騎士が持っていた物だ。
キッドも、自分が仕留めたバシネットの騎士が所持していたコントローラを拾い上げていた。
「とりあえず、こいつは預かっておこうか」
――その時、彼らの所有武器を表示する欄に、「Brave driver」の文字が現れた。どうやら、メニューバーも復活しているようである。
「『ブレイブドライバー』、ねぇ。玩具みたいな風体の割に、随分とまぁ仰々しい名前だな」
「鎧を顕現させるアイテムなのに、装備品ではなく武器の扱いなのですね。……無理なコンバートによるバグでしょうか」
「いや、武器で合ってるさ。このコントローラのボタンが、あの世界観ブチ壊しビームの『引き金』……ってことなんだろうよ」
戦利品を手元で弄びながら、トラメデスは先刻の戦いで目撃したレーザー照射を反芻し、苦々しい面持ちとなる。キッドもあの戦いで、苦痛の果ての「死」を味わったプレイヤー達の絶叫を思い返し、唇を噛み締めた。
――すると。トラメデスは思い立ったように顔を上げ、サングラスの中心を指先で持ち上げる。
「……しかし、アー坊。妙だと思わないか」
「えぇ。……さっきから静か過ぎる」
そう。キッドが言うように、周辺は先程までの大騒動が嘘のように、静まり返っていた。
メニューバーが復活したため、早々にログアウトして脱出した――ということも考えられたが、まだキッド達のメニューバーにはログアウトボタンが復活していない。
しかも、周りは未だに土煙が立ち込めていて、プレイヤー達の姿が見えなかった。
一体、叫び声を上げて逃げ惑っていた彼らは……どうなったというのか。
エリザベスの安否が気に掛かり、キッドの顔に焦燥の色が浮かび上がる。――その時だった。
視界を眩ませる砂塵の煙。その彼方からゆっくりと……こちらに歩み寄る、人影が現れたのだ。
無警戒に自分達に近づいてくる影に、キッドとトラメデスは互いを見合わせアサルトライ
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