第5話 帝王の影
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しく、その手は道半ばで地に堕ちてしまう。
動かなくなった相棒に気づき、グレートヘルムの騎士が、キッドのいる方向に視線を向けた。
(そいつが命取りだぜ、バケツ野郎)
だが。キッドとは反対の方向にある壁に隠れていた、トラメデスは。待っていたその好機を狙い、身を乗り出して一瞬で引き金を引く。
――刹那。発砲音が轟く、その時。
激しい金属音と共に、トラメデスの銃弾がグレートヘルムの騎士に命中した。
力の源泉であるベルトに狙撃を受け、グレートヘルムの騎士も膝をついてしまう。――だが、まだ勝ち目はあると見ているのか。
彼の震える指先は、コントローラのボタンに向かっていた。
(……やはりな。だが……)
あの砲門で一帯を焼き払われてしまえば、狭いキャンプ地はもちろん、ここで生きているプレイヤー達もひとたまりもない。
しかし――その一撃が実現することは、なかった。
「……ッ!」
反対方向から再び飛んできた銃弾が、指先を弾いてボタン入力を阻止する。
砂煙で正面も周囲もまるで見えない中、寸分狂わずグレートヘルムの騎士を狙撃する部下の手腕に、トラメデスは内心でガッツポーズを送った。
(いい狙いだ、アー坊!)
そして――決定打となる銃弾を当てるべく。照準を、コントローラの中心に合わせ、再び引き金を引く。
(散々暴れたツケだ。きっちり払っときな)
乾いた発砲音が空に響き、やがて逃げ惑うプレイヤー達の喧騒に掻き消されて行く。前も見えず、どこに逃げればいいのかもわからない彼らは――自分達を追い詰めていた敵が、完全に沈黙したことにも気づかなかった。
膝から崩れ落ち、グレートヘルムの騎士は大地に伏せる。彼は同胞のように、地に転がる自分のコントローラに手を伸ばしながら……意識を、手放していた。
そんな彼らの背を一瞥し。互いの姿が見えないまま、キッドとトラメデスは同時に立ち上がり周囲を警戒する。
だが、すでに敵の気配はこの場から消え失せているようだった。
(……仕留めた? やけにあっさりしているが……)
(囮……じゃあ、ないな。辺りに伏兵の気配もねぇ。それに……)
それをいち早く悟ったトラメデスは、銃口を下ろし歩み出す。その足は、鎧騎士――だった者達の傍で止まった。
(仮面まで剥がすってのは、演技にしちゃあやり過ぎだぜ)
――すでに、この時。ベルトを撃たれて倒れていた彼らは。
鎧も仮面も失い、アバターの素顔を晒していたのだった。
◇
――静寂が訪れた砂漠の戦地。
ベルトを撃たれ、その地に倒れ伏した2人のプレイヤーは、最後まで動き出す気配を見せなかった。素顔を晒したまま気を失っている彼らを見下ろした後、キッ
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