第4話 守るべき人
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に行っている可能性もあります」
「彼女がインするのはいつぐらいからだ?」
「基本的には19時以降……と聞いています。家の手伝いで遅くまで忙しいとか……」
「……ちっ、もうとっくに過ぎてんじゃねぇか」
トラメデスは時計を見遣り、19時30分を指す針を目にする。忌々しげに口元を歪めた彼は、キッドと頷き合いながら「ヘブンダイバー」を手にした。
VR潜入のために用意されている、専用の椅子と接続端子。そこに駆け寄る2人は、迅速にログイン体勢に入った。
「回線借りるぞ!」
「は、はい……ご武運を!」
予断を許さない状況。それを前にして、解析班の青年は緊迫した面持ちで潜入班の2人を見送る。流れるようにフルダイブの体勢になった彼らは、互いを横目で一瞥しつつ、スイッチとなる台詞を言い放った。
――ログイン!
◇
碧き電子空間の牢。インターフェース・エリアと称されるその世界で、キッドとトラメデスは「RAO」への接続完了を待ち続けていた。
彼らの眼前にある立体パラメータは、「100%」の表記を目指して数値を徐々に高めていく。
「ここを抜けて『RAO』に出たら、速攻で嬢ちゃんと連絡を取れ。すでに戦闘中かも知れんがな……」
「えぇ。キャンプ地にいるならすぐに会えるでしょうけど……すでにランキング戦に絡んでいるなら、こちらも飛び入り参加するしかありませんね」
ただでさえゲームの性質上、血の気の多いプレイヤーばかりなのだ。話を聞かせるには、実力で黙らせるしかないケースもありうる。
キッドとトラメデスは説得のために、熱心なプレイヤー達すらも相手にしなくてはならない可能性を鑑みて、身構えていた。
やがて。彼らの行く手を阻んでいたログイン待ちの時間が、終了を迎え。2人の目の前を、白い輝きが覆い隠してしまう。
「……来たぞ。頼むぜ、二股王子」
「……いい加減にしないと怒りますよ」
ホワイトアウトしていく視界の中で、冗談を飛ばすトラメデスは、強張った表情を浮かべる部下の貌を思い浮かべていた。緊張を拭わんとする彼の言葉は、からかいだけの色ではなかったのかも知れない。
――そして。
白く染められた彼らの視界は。
夢から醒めるかのように、ゆっくりと……「RAO」の世界を映し出していた。ゲームのスタート地点となるキャンプ地に、2人の男が姿を現わす。
まず、ログインには成功した。あとは彼女――ベテランプレイヤーのエリザベスと連絡を取り、状況を報せなくてはならない。
一分一秒でも早く、実行に移さねば。そのように気負うキッドが、視界が明瞭になった瞬間に指先を滑らせる。
「――!?」
時、だった。
立体メニューバーを出そうと動かした、キッドの指
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ