第4話 守るべき人
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女性の手形が、赤い跡になって残されていた。
その様子から大体何があったのかを察したキッドは、愛車から降りつつため息をつく。見慣れた部下の反応を目にした愛の狩人は、フッとほくそ笑んでいた。
「……で、どうよ首尾は。気持ちの整理はついたか?」
「……まぁ、おかげさまで」
「そいつは何よりだ。――何も言えねぇままくたばるなんざ、堪えられるもんじゃねぇし……堪えちゃいけねえ」
「……」
足早にエレベーターに乗り込み、解析班の部署を目指す2人。その道中、トラメデスの口から呟かれた言葉に、キッドは神妙な面持ちを浮かべる。
「ま、大人になればいずれわかるさ」
「俺はもう成人です。……だからもういい加減、『アー坊』はやめてください」
「中身の話だよ。……この件が片付いて、お前がイッパシになったら、考えといてやる」
――この先に待ち受けているであろう、あの鎧騎士達との対決。例え仮想空間の戦いであろうと「リアリティ・ペインシステム」が絡む以上、その勝敗には「生死」が関わることになる。
それほどの脅威でなくば、多くの人命を奪うに至った「DSO」事件は起こらなかっただろう。
その渦中に飛び込む以上は……万一に備え、未練を断たねばならない。
『……来年も、また。こうして、あなたと2人でいたいです』
(来年も、か……)
キッドはいつになく真剣な上司の横顔を一瞥し、自分がベサニーと過ごしたひと時の重みを、改めて噛み締めるのだった。
◇
「……プレイヤーのID?」
「えぇ。件の鎧騎士達が発見され、リアリティ・ペインシステムが作動していた全てケースを調べたところ――IDが古い、ベテランプレイヤーが居る戦地にのみ作動していることがわかりました」
数多のコンピュータに囲まれた、電子ネットワークの砦。そう形容して差し支え無い一室の中で、キーボードを叩く解析班の青年はそう告げた。
彼の背後から、その報告に耳を傾けるキッドとトラメデスは、互いに顔を見合わせる。
「ベテラン……それも、サービス初日から参加している程の古参プレイヤーがいる。それが、全てのケースに共通している唯一の条件です」
「……ベテラン、ねぇ。道理で時間や場所では引っ掛からなかったわけだ」
「じゃあ、俺達がエキシビションマッチで奴らと遭遇したのは……」
――あの戦闘。
他のプレイヤー達を一蹴しつつ、こちらを目指して前進していた鎧騎士達。調査のためにゲームを始めたビギナー達に向かう、彼らの真の狙いは――自明の理であった。
「アー坊。……あの嬢ちゃん、昨日の今日でインして来ると思うか?」
「ない……とは、言い切れません。面倒見のいい彼女のことです、他のプレイヤーに昨日の件を報せ
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