第4話 守るべき人
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って店の足しにしてもいい。……こんな物でしか、気持ちの一つも伝えられない男だ。俺は」
「ぁ……」
余りにも自分には不釣り合いな、高価過ぎるプレゼント。それを前にしたベサニーは大慌てで手を振り、思わず拒んでしまう。
――だが。自分に目を合わせず、微かに頬を染めながらそう告げるキッドを目にして。彼女は、彼の心中に気づいてしまった。
(キッド、さん……あ、あたし……)
何年にも渡る付き合いの中で、今まで見たことのなかった、彼の貌を知ることで。
――そして、考えてしまう。こんな話を急にして来たということには、何か意味があるのではないか、と。
例えば。これから危険な任務に就くから、その前にプレゼントを渡す……など。
「キッドさん……あたし、嬉しいです。プレゼントも、ですけど……そんなふうに、言ってくれたことが。何もかも、夢みたいで」
「ベサニー……」
「……全部全部、あたしには勿体なさ過ぎるくらいで。だから、いっそ夢だと思って……ワガママ言っても、いいですか」
その考えに至る瞬間。ベサニーは、顔を赤らめたまま、真摯な眼差しでキッドを正面から見つめる。上目遣いでこちらを見遣る想い人の貌を前に、彼も内心で息を飲んでいた。
「……来年も、また。こうして、あなたと2人でいたいです」
――その一言は。何があっても、必ず帰って来てほしいという、彼女なりのサインだった。
無茶しないでと泣きつけば、きっと彼を困らせてしまう。だが、このまま知らないふりはできない。そのジレンマの果てに出た答えが、その言葉だったのである。
「……あぁ」
感嘆の息を、漏らしながら。キッドは絞り出すような声で、そう答えた。感情を押し殺したその声色が、彼の胸中を表している。
衝き上げるような、喜び。筆舌に尽くしがたい、その想いを。
◇
――その日の夜。ベサニーを車庫まで送り届けた後、キッドは愛車に跨りFBI本部に駆け付けていた。本来なら今日は非番だが、今はそんなことを言ってはいられない。
解析班から、連絡が来たのである。「各ケースに共通する条件が見つかった」――という、吉報を携えて。
「先任! ……またですか」
「おぅ、まぁな。……とりあえず、今は置いとこうぜ」
「……全く」
本部の地下駐車場を照らす、二つの輝き。その光明を放つ2台のバイクが、合流するように並んで停車する。
キッドの「スクランブラー・sixty2」の隣に停まった「XL1200CX・ロードスター」。トラメデスの愛車であるブラックデニムのハーレーは、燻る闘牛の如きエンジン音を響かせていた。
漆黒のバイクに跨るトラメデスは、気障な仕草でヘルメットを脱ぎ去り、艶やかな金髪を靡かせる。そんな彼の頬には――
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