第4話 守るべき人
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ワシントンの景色を一望できる、超高層ビル。そこからガラス張りの向こうにある街並みを見下ろし、ベサニーは一生縁がないはずだった世界にいることを実感していた。
彼に用意された真紅のドレスに身を包み、借りて来た猫のように窓際の席で固まる彼女を、向かいに座るキッドは無言のまま見つめている。
(キッドさん……あの後、大丈夫だったのかな……)
いきなりこんな場違いな所へ招待されたことに、動揺しながら。ベサニーは、こちらを見遣る想い人と不安げな眼で視線を交わしていた。
――昨夜の「RAO」で起きたことは、今でも彼女の脳裏に深くこびりつき、その胸中を苛んでいる。
彼女自身は動転する余り、はっきりと覚えてはいなかったが……それでも、あの絶叫と恐怖だけは鮮明に記憶されていた。
驚きの叫びや、悔しがる声なら、今まで何度も聞いて来た。だが、あのような声は知らない。あんな、さも本当に撃たれたかのような悲鳴は。
(あの噂は本当だったんだ……! 帰ったら、「RAO」のみんなに知らせてあげなくちゃ――)
「ベサニー」
「ひゃあい!」
あの時は恐怖に負け、想い人に情け無いところを見せてしまった。だが、このままでは終われない。
自分を守ろうと奮闘していたキッドや、仲間の「トラメデス」のためにも、「RAO」のプレイヤー達に事件のことを広めなくては。
――内心で、そう息巻いていた彼女だったが。真正面にいるキッドから不意に声を掛けられ、思わず変な声を出してしまった。
数秒後に自分が出した声を思い返し、ベサニーの顔が髪の色より真っ赤に染まる。
「ぁ、あぁうぅ……」
「……大丈夫か?」
とても大丈夫そうには見えないが。キッドはあくまで彼女のペースを尊重することに決め、落ち着いた様子になるまで静かに待ち続けていた。
「……もう落ち着いたようだな」
「ご、ごめんなさい……」
「別にいい、呼びつけたのは俺だ」
それから暫く間を置いて、ようやく2人は食事のひと時を共有するに至った。すでに外は黄昏時を過ぎており、周囲はベサニーの知らないアダルトなムードを帯び始めている。
そんな未知の空間にたじろぐ彼女を、表情に出さぬよう微笑ましく見守りながら。キッドは、懐に手を伸ばした。
「ベサニー」
「は、はい」
彼の雰囲気が変わったことを感じたのだろう。ベサニーは顔を強張らせ、キッドの言葉を待つ。
――そして、そんな彼女の前に。煌びやかな箱に収まる、一つのペンダントが差し出された。
「えっ……」
「……この先、少し忙しくなりそうでな。数日前倒しになるが……クリスマスプレゼントだ」
「え……で、でもあた、あたし、こんなの貰っても……!」
「要らないなら、売
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