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Darkness spirits Online
第4話 守るべき人
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…勝ちたいなら、勝ちたくなるように……か)

 ――そして、翌日。

 週末を前にして、キッドは「彼女」に気持ちを伝えることに決めた。
 必ず勝って生き延びて、その先にある答えを知るために。知りたい、という想いを、力にするために。

 ◇

 ――キッド・アーヴィング。アーヴィングコーポレーションの跡取りとして生を受けた彼は、幼少の頃から英才教育を受けてきた。
 父の期待に応えなくては。周囲の期待に応えねば。その重責が、寡黙な今の彼を作り上げてきたのだろう。

 心を許せる友を得られず、それゆえ自身へのプレッシャーに対する共感を得ることもできず。彼を賞賛する者達は皆、彼の「外側」にいた。
 それでも構わない、これも跡取りとしての運命。そう受け止めて生きていくことができれば、彼はある意味では幸せだったかも知れない。
 だが。それを受け入れるには、彼はまだ若過ぎた。

 理解者を得られない中、荒んで行く彼は夜中にバイクを乗り回すようになり。俗に言う「不良」と呼ばれる立ち位置に身を落とすようになった。
 ――「Workshop Hopkins」に身を寄せるようになったのは、その頃からである。その時に彼は、ベサニー・ホプキンスとの出会いを果たしていた。

 赤毛の髪という理由から、周囲に疎まれているという彼女。その背景を知り、孤独な人間として共感を覚えていたのかも知れない。
 キッドは彼女との関わりを通じて、徐々にではあるが心を落ち着けるようになり、不良から遠退いて行った。彼女はいつしか、彼の「内側」に住み着いていたのである。

 ……その後、大学を飛び級で卒業してFBI捜査官となった今も、「Workshop Hopkins」との交流は続いている。
 誰からも色眼鏡で見られてきた彼にとって、「DSO」事件のことがあっても変わらずにいてくれた彼女は、唯一無二の存在なのだ。

「……ベサニー……」

 どんな事件が起きても、自分がどんな目で見られていても、変わらず慕ってくれる少女。そんな想い人の姿を脳裏に浮かべ、キッドは「スクランブラー・sixty2」を走らせる。
 白い雪でデコレーションされたアスファルトの上を、鋭いラインを描くバイクが駆け抜けて行った。

 ――その背後では。いつか彼女を乗せる時に備えて新調したマフラーが、穏やかに息を吐き出している。

 ◇

(……ど、どど、どうしよう)

 学校の帰り道。いつものように灰色の1日を終え、ベサニーは帰路につく――予定だった。昨日の夜までは。

 だが昨晩、キッドから食事の誘いが来てしまい、「たまには羽を伸ばせ」と父に促されるまま……彼の行きつけである高級レストランに来てしまっていた。

(わ、わぁ……やばいやばい、どうしようあたし……!
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