第3話 仮面の装甲歩兵
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
力を失っているらしく、スナイパーは腰に忍ばせていたハンドガンを乱射し始めた。
無軌道に飛ぶ弾丸が、鎧騎士達の全身に命中するが――金属音が反響するのみであり、ダメージを受けている気配はない。
このままでは、他のプレイヤー達のように嬲り殺しにされてしまう。そう判断したキッドが、無謀を承知でアサルトライフルを手に、援護射撃に入ろうとした――その時だった。
方々に乱れ飛ぶ銃弾。そのうちの数発が、鎧騎士達のベルトに命中し。その箇所だけが、白く点滅した。
「……あれは!」
そのエフェクトは、「DSO」における「ダメージが入った」ことを示す反応の一つ。それを知るキッドは、今の現象を目の当たりにして……彼らのウィークポイントを悟るのだった。
――しかし。それは、鎧騎士達の逆鱗に触れることを意味していたのか。
『Fourth generation!! Ignition fire!!』
今度はグレートヘルムの騎士が、腰のコントローラに手を伸ばした。四色あるうちの、黄色のボタンに触れた彼の両肩に――2門の黒い砲身が現れる。
「……!」
二つの大砲の狙いは、すでに虫の息のスナイパーへ向けられていた。その砲口には、四色の光が螺旋を描いて集まっている。
もはや、止める術も暇もない。
「アー坊、伏せろッ!」
トラメデスが叫ぶと同時に、キッドは手にしていたライフルを捨て、地に伏せていた。
そして――蓄積されていた四色の光は、大気に絶大な振動を与え。
その余波で舞い上がった砂嵐もろとも、四本に伸びる閃光の放射で、全てを吹き飛ばしていた。
「きゃあぁああッ!」
「ちっ……演出は現実離れしてるくせに、こういう現象だけリアルに拘りやがる……!」
システム上ありえないほどの衝撃波を浴び、エリザベスはたまらず転倒してしまう。そんな彼女の前に立ち、トラメデスは砂の濁流から彼女を庇い続けていた。
「く……ぁっ……!」
キッドも、地に伏せながら負傷しているプレイヤーの頭を抱き抱え、懸命に守り続けていた。
◇
――その砂嵐が過ぎ去り、あの放射の余波が鎮静するまで。一体、どれほどの時が流れたのか。
それは、時計を見ればわかることだが……居合わせた人間は誰も、そんなものを確認する余裕はなかった。
「……あ、いつらは……!?」
砂塵が舞い飛ぶ音。あのスナイパー共々、廃墟が撃ち砕かれた轟音。遠く離れた自分達にまで、間近のように迫っていた爆発音。
その全てが過ぎ去り、静寂が戻った頃。キッドはようやく、砂まみれになった顔を上げたのだが――その頃にはすでに、この戦場の景色は一変していた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ