第3話 仮面の装甲歩兵
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手に一丁の拳銃が現れる。
自身のコントローラに似た形状のグリップがある、その拳銃を握り――彼は銃口を射線上に向けた。電子音声に合わせ、その中心点からは妖しい光が溢れ出ている。
「駄目だッ!」
――直感に訴える、殺気。それを察知したキッドが、声を上げる。よりも、速く。
バシネットの騎士は引き金を引き――白い閃光を纏う光弾を、その銃口から解き放つのだった。大地から舞い上がる流星が、一条の光となり砂塵の戦場を駆け抜ける。
一瞬にも満たない、発射の瞬間。それを目撃したキッド達の聴覚に、スナイパーの断末魔が轟いた。
「……ひっ!」
「スナイパーが射程に入るハンドガンかよ……チートもいいとこじゃねぇか。アー坊、急いでずらかるぞ! ここの廃屋に隠れても無駄だ!」
唇を震わせ、さらに萎縮するエリザベス。そんな彼女を庇うように立ちながら、トラメデスは手を振り撤退を促す。
キッドもそれに頷き、渾身の力でプレイヤーを担ぎ上げた。――すると。
「……ッ!」
バシネットの騎士に撃たれたスナイパーが、肩を抑えながら転げ落ちてきた。崩れた廃墟の崖に潜んでいたらしく、鉄柱や瓦礫に墜落しながら、地面近くまで転落していく。
やはりリアリティ・ペインシステムはまだ作動中であるらしく、スナイパーは仲間達と同様に、耳をつんざくような絶叫を上げてのたうち回っていた。
――HPが全損していない、ということは仮想空間の命が続いているということであり。リアルの肉体と違い、精神に対する防御としての「気絶」が意味をなさない……ということを意味している。
HPが残っている限り、仮に気絶したとしても、その攻撃が通る体は仮想空間に残され続ける。ゆえに激痛により気を失っても、次の瞬間にはさらなる痛みにより強制的に覚醒させられるのだ。
それはHPが全損しない限り、永遠に続く。気を失おうとも、「ゲームだから」と構わず攻撃し続けるプレイヤー達により。
つまり。現実の肉体とは異なるプログラムの体で生きている、この仮想空間で「現実の痛み」がある……ということは。
現実世界なら「気絶」という肉体の機能により回避できる痛みからも、逃げ切れない――ということなのだ。
そして、精神のキャパシティを超える痛みを味わい続けた者は、やがて精神に異常を来す。そこから発展して生まれたPTSDが、「DSO」事件の惨劇へと繋がったのだ。
「……や、めろ」
加害者側として、それをよく知っているキッドは。口元を震わせ、制止の言葉を吐く。だが、あの鎧騎士達がそれを聞き入れることはない。
「……ひ、ぎぃ、あぁあぁあ!」
絶望的な痛みと、そこから逃れられない閉塞感からか。すでに正常な判断
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