第2話 仮想世界の戦火
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装に身を包む2人は、キャンプの近くを歩みながら辺りを伺っている。様々な装備品で身を固めるプレイヤー達は、次のバトルに向けて作戦を練り合っていた。
「解析班から報告はありましたか?」
「あぁ、ついさっきな。……やっぱり、ハッカーの線が強いらしいぜ」
キッドの問い掛けに答えるトラメデスは、仮想空間の空を仰ぐ。蒼く澄み渡る世界は、現実と見紛う精巧さを持っていた。
――この世界の基盤である「DSO」を開発したギルフォードの実力が、垣間見える。
「『RAO』のサーバーが、一時的にコントロール不能になるケースがここ数週間頻発してるそうだ。まだ運営は正式な公表をしていないがな」
「ハッキングで運営からコントロールを奪い、『RAO』内に在る例のシステムを引き出している……ということですか。『仮面の装甲歩兵』については何か分かりましたか?」
「甲冑姿の没データは幾つもあるから、ここで目撃された個体がどれかまではわからねぇらしいが……『RAO』のソフト内にデータがあることは間違いねぇ。……ギルフォードの説。マジに捉えてもいいかもな」
これほどまでに現実に近しい仮想空間を創り出せる人間が、その力をテロに行使すればどうなるか。そうと知らず、ゲームとして楽しんでいる人々は、どうなってしまうのか。
――そんな考えが過ぎる度、彼らはこの事件の深刻さを再認識していた。行方不明であるギルフォードが実行犯だとすれば、それに抗う術があるかどうか……。
「……しかしよ、アー坊。いい加減アバターくらい弄ったらどうよ? 変装は捜査官の嗜みだぜ?」
「堂々としていれば、却って怪しまれないものです。……それに、先任のようになるのも遠慮したいので」
「あん? なんだよカッコいいだろうが、このウェスタンルック」
「……はぁ」
――その不安を拭うかのように。トラメデスは努めて明るく振る舞い、キッドの容姿に言及し始めた。
「RAO」は「DSO」と同じく、リアルなディテールを追求したグラフィックであり、ポップな世界観で構成されている「Happy Hope Online」こと「ハピホプ」とは対極のゲームである。
ゆえにプレイヤーのアバターも、ある程度は現実に即したデザインとなっている。ゲーム内通貨を利用することで様々なイメチェンは可能だが、デフォルトのアバターは、プレイヤーのリアルに合わせた外見になるのだ。
トラメデスはゲームで稼いだ通貨を使い、いわゆる「ネタ装備」であるテンガロンハットを被っている。米兵の迷彩服を纏いながら、そんなものを被っている彼はひどく浮いていた。
キッドはそんな先任を、冷ややかな眼差しで一瞥する。こうはなりたくないな、と表情が語っていた。
「第一、我々はここに遊びに来ているわけではないのですよ。資金があ
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