砲皇勇者ヴァラクレイザー
第1話 クリスマスの怪事件
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すように、彼の眼は遠くを見つめていた。
不正や不義を嫌い、道理に背く者は上司であろうと許さない苛烈な正義漢。それがキッドがよく知る、アレクサンダー・パーネルという男だった。
ゆえに、そんな彼が上官に反発したとなれば、何があったかはある程度想像がつく。
「ま、あいつも俺も中身はガキだったってこったな。汚ねぇ相手にも媚びへつらって生きるのが、お利口なオトナなんだからよ」
「俺は……そうはなれません。そんなに、器用じゃ……ない」
「かもな。でも、俺達と違ってお前は、自分を殺してでも何かを為そうって気概がある。そういう辛抱強い奴なら、やっていけるさ」
「……」
トラメデスは明るく笑い飛ばしてみせるが、一方のキッドは苦虫を噛み潰したような表情のままだった。
――「仮想空間」というものが誰にとっても身近なものになったこの時代に、それをゲームとして売り出し利益を得る以上、プレイヤー達の安全と安心は何としても守らねばならない。
その信念の下、キッドはサイバー犯罪に対処する術を学ぶべくFBIの門を叩いた。いずれ会社を継ぐ上での、心構えを身につけるために。
――しかし、その先には「DSO事件」という、想像を絶する試練が待ち受けていた。
自分達の会社が開発したゲームのために、安全はおろか人命すら失われ、取り返しのつかない傷を生んでしまったのだ。
謝罪会見や然るべき支援を通じて、法的には決着が付いている事件であり、終わったこととして見做す者も多いが――今でもその重責は、御曹司であるキッドに深くのしかかっている。
償わねばならない。これ以上、何人たりとも傷付けさせるわけにはいかない。その焦りがいつしか、トラメデスが云うように「自分を殺す」方向に向かっていたのだろう。
それは、本当の強さとは違う。ただひたすらに自分を罰することで、潜在的に赦しを乞い続けているに過ぎない。トラメデスも、それはわかっていた。
だからこそ、もがき苦しむかのような生き方しか出来ない彼の胸中を慮り。その重荷を和らげるため、敢えて彼の在り方を肯定したのである。
だが、その優しさに気づかないキッドではなく。こうして心配を掛けることしか出来ないもどかしさは、彼の良心をさらに苛んでいた。
「……よぉし。明日は解析班に『RAO』の内部データを根こそぎ調べてもらおうぜ。例の装甲歩兵やリアリティ・ペインシステムのこともわかるだろう」
「えぇ……そうですね」
「俺らは引き続き、一般プレイヤーとして潜入捜査だ。……ハマり過ぎて、仕事忘れんなよ〜?」
「その辺りは先任の方がよほど怪しいのですが」
「オッフゥ信用ゼロ? おいおい困るねぇ、こう見えても仕事とプライベートはきっちり分けるタイプなんだぜ?」
それを汲んだ上で、トラメデス
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