砲皇勇者ヴァラクレイザー
第1話 クリスマスの怪事件
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武装ならあり得るが、それでも全く肌が見えない装備ではないのだ。事情聴取した元プレイヤーも、「あんな中世の鎧騎士みたいな兵装は見たことがない」と証言している。
彼が見たことがないだけ、とも取れる話だが――「RAO」の運営スタッフも、そのような「世界観にそぐわない装備」は実装していないと発言していた。
あるはずのないシステム。あるはずのない装備。その二つが同時に発生している以上、無関係であるとは考えにくい。トラメデスとキッドは、この「仮面の装甲歩兵」にヒントがあると見ていた。
「……考えられるのは、何者かが没データを引き出して『RAO』にあのシステムを実装させている……ってとこだな。『仮面の装甲歩兵』ってのも多分、元々ソフトに入ってた没データの一部だろう。今のアーヴィングコーポレーションは方々から目を付けられてるから、検査もなしに変なアップデートはできねぇ」
「少なくとも……『RAO』のゲームエンジンが『DSO』の流用であることと、リアリティ・ペインシステムが没データとしてソフト内に残っていることを知らなければ、できない芸当ですね」
「と、すると……アーヴィングコーポレーションの関係者の仕業……ってのが、妥当な線だな」
トラメデスは新聞を放り投げると、両手を頭の後ろに組み、天井を仰いだ。そんな彼の横顔を一瞥し、キッドは目を細める。
「……あのシステムを開発したという元社員が、1年前から行方を眩ましているそうですが」
「アレックスが追いかけてる奴だな。確か名前は――アドルフ・ギルフォード」
その名前を耳にして、キッドはディスプレイに視線を移す。画面には、年老いた一人の男の顔写真が映されていた。
――トラメデスが「アレックス」という愛称で呼ぶ、FBI捜査官の1人「アレクサンダー・パーネル」。その人物が1年以上に渡り追い続けているのが、写真の男「アドルフ・ギルフォード」だ。
「パーネル捜査官はあれ以来、血眼でギルフォードを追い続けています。……俺の、せいでもありますが」
「なにせ、可愛い妹の仇だからな。お前が気に病むのも分かるが……あいつは、お前を恨んじゃいねぇさ。アレックスは確かに脳髄までガチガチな堅物だが、裁きを受けた相手を執拗に責めやしない」
トラメデスはディスプレイを一瞥した後、視線を外して煙草に火を付ける。天井に昇る煙を見上げる蒼い瞳は、何処と無く優しげであった。
「そういえば、パーネル捜査官はあなたの同期でしたね」
「捜査官としてはな。デルタフォースに居た頃は、あいつが上官だった」
「なぜFBIに?」
「あいつが嫌うタイプの上官がいてな。2人揃って楯突いて、この始末さ」
「……」
トラメデスは苦笑を浮かべ、窓の外に広がったワシントンの夜景を見遣る。過去を思い返
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