砲皇勇者ヴァラクレイザー
第1話 クリスマスの怪事件
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ト姿の人物。彼は呆れ返った表情で、さらに深くため息をついた。
「よくありません。我々はここに遊びに来ているのではないのですよ。……それと、その子供っぽい呼び方もやめてください。俺の名は、キッド・アーヴィングです」
「……アーヴィング……!?」
すると。その名を耳にして、近くにいた女性が反応を示した。
彼女は信じられないような表情を浮かべ、キッドと名乗る青年の顔を見遣る。――そして、その表情は徐々に。悍ましいものを見るような色に変わっていった。
「……私の連れが失礼しました。お怪我はありませんか?」
「え、えぇ、大丈夫。……私、これで失礼するわね、じゃあ」
自分に向けられる視線。その意味を知りつつも、キッドはあくまで紳士的に対応する。一方、女性の方は関わり合いになりたくないとばかりに、そそくさとこの場を立ち去ってしまった。
「……だぁから、黙ってた方がいいっつってんのによ」
「それでアー坊、ですか? ……そんな気遣いなら無用ですよ、先任」
そんな彼女の後ろ姿を見送り。「先任」と呼ばれるサングラスの男は、隣に立つキッドを一瞥する。無表情のまま、踵を返す部下を見つめるその眼差しは、手のかかる弟を見ているかの様だった。
――彼らは、FBIサイバー対策部に属する捜査官。近頃、あるVRゲームで発生している奇妙な事件を追い、この場に訪れていた……。
◇
――アーヴィングコーポレーション。
アメリカで初めて、フルダイブ技術をゲームに本格投入した一大メーカーであり、あらゆるVRゲームに携わる企業として知られている。
だが、1年前。「圧倒的なリアリティ」を謳い、を満を持して発売した「Darkness spirits Online」――こと「DSO」で発生した事件の数々は、その名声に多大な傷を付けた。
公式に謝罪会見を行った上、被害者への支援を表明したことで一応の決着はついたのだが……その名に拒否反応を示す人間は、今も決して少なくはない。
「……いつだって人はわからねぇもんさ、他人の苦しみなんてな」
「別に……分かってもらうつもりなど、ありませんよ。……分からせる、それだけのことです。悪夢ならとうに皆、醒めているのだと」
その御曹司であるキッド・アーヴィングは現在、FBIに籍を置く捜査官の一人として活動していた。
――VRに纏わる犯罪を自らの手で取り締まり、アーヴィング家が呼び込んだ「罪」の禊とするために。
FBI本部のオフィスにて、キーボードを叩き書類を作成しているキッド。そこからやや離れた位置にあるソファに踏ん反り返り、「先任」は新聞を読み耽っていた。
「……『RAO』の総プレイヤー数、2割減少。『DSO』の爪痕、未だ消えず――か」
――「先任
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