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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
56.終局の手前で
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るはずだ……君が望めば』
原初の海が彩斗を拒む。
『……これが最善策だから』
先ほどとは違う声がした。
すると聞こえた声に彩斗の意識がつながる。
バラバラになっていた存在が再び、集結し、結合し、合わさり、混ざり合う。
「何が最善策だからだ。……ふざけるなよ」
確かに聞こえた声。生きることから逃げた者の声。そんな言葉を彩斗は認めないし、認めさせてはいけない。
『それでこそ、僕が認めた君だ。さぁ、覚醒の時だ』
声が徐々に遠のいていくにつれて光が密度を増していく。眩しい光に包まれて彩斗の意識は再び世界と繋がれる。
『それと最後……告だ。あま…彼の言……耳を傾……な。あいつは君の───■だ』
緒河彩斗は、目を覚ました。
魔力がぶつかり合う異様な感覚が身体中に突き刺さる。
自分がいる場所を把握しようと体勢を変えようとすると鼻孔をくすぐるいい匂いと頭を包み込む柔らかな感触。
「彩斗君!」
頭上から不意に聞こえた声に彩斗は顔を向けた。
今にも泣き出しそうな表情をした友妃がそこにはいた。声を上げるよりも早く友妃は彩斗の身体を強く抱きしめる。
「……よかった。……生きてる……生きてる」
そこで自分の身に何があったのかを思い出した。ローブの不可視の攻撃によって身体を潰された。
心臓も、脳も、潰されて確実に死んだ。
だが、彩斗は今こうして生きている。それが意味することは、やはりあの時たどり着いた結論こそが真実だと思い知らされる。
「悪い。心配かけた」
「心配かけたじゃないよ、バカ! あんな無茶ばっかして本当にバカ、バカバカ!」
友妃は涙を流しながら彩斗の身体をぽかぽかと握りこぶしで殴り始めた。
彼女がどれだけ心配させたかを思うと当然だろう。体は元に傷一つないとしてもボロボロの制服にシャツは真っ赤に染まっていることから惨劇を物語っている。
「悪かったって」
涙目の友妃を宥めながら彩斗は立ち上がり、瓦礫の向こうを睨みつける。
向こうでは、今も強大な魔力の塊同士がぶつかり合っている。時折、襲ってくる衝撃波がその戦いの激しさ有に想像できる。
そんな魔力がぶつかり合う者たちがいるとすれば、必ずそこには彼女がいる。
彩斗が一歩踏み出すとボロボロ制服の裾が強く掴まれた。
「……ダメだよ。……行かないで」
友妃が止める気持ちはわかる。いや、わかっているつもりなだけなのかもしれない。
彼女も肌で感じてわかっている。金髪の吸血鬼、立上遥瀬を相手にしても彩斗では絶対に勝てない。だが、それは人間だった頃の話だ。
彩斗は既に人間ではなくなっている。いや、むしろ最初からそうだったのかもしれない。それを自覚していなかっただけで。
友妃に不器用な笑み
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