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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
56.終局の手前で
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土地そのものを崩壊につながる危険な行為だ。
少女は声を上げようとするが目の前で起きている光景にさらに驚きを隠せない。
「て……テメェ、が……なぜそれを」
先ほどまで余裕さえも見せていたはずの青年が大量の吐血をしながらその場に倒れ込んでいる。
「君だけ魔力切れがないと言うのはちょっと卑怯だしね。それが君自身の能力だと言うなら僕もここまではしないさ。だけどそれが借り物なら話は別だね」
男は戸惑う少女を横目で見てから説明を続けた。
「君の魔力は、この土地から魔力を供給され続けることで無限にも等しい魔力を得ていた。それはあまりにもフェアじゃないよね」
「だから……地脈を、壊した」
少女が途切れ途切れの言葉で紡ぐ。
地脈。地中に宿るエネルギー、つまり気だ。地脈は万物を活かし、万物に影響を与えるものである。
それを壊す。それ意味することは……
男は満面の笑みを浮かべ、指を鳴らす。
「正解。そうすれば、彼は君と一緒の状態になる。これで勝負はイーブンになるよね」
「で、でも……それじゃあ……」
少女は恐る恐るその言葉を紡ごうとしたが、それよりも早く男は口を動かした。
「この土地は消え去るだろうね。霊力を失った土地は崩壊するしか道はないからね。持っても後十分ってところかな?」
男は軽い口調で語っていく。
「まぁ、獅子王たちが少しは時間を稼ぐだろうけどね。それでも三十分が限界だろうね」
一つの街を壊そうとしているのにこの男は何を言っているんだ、と少女は思った。だが、圧倒的なまでの魔力。眷獣を一瞬で消す力。一撃で地脈に致命的なダメージを与えるほどの魔力。
それは少女にとてつもない恐怖を与えた。最初に男を見た時から感じた違和感。
先ほど第三真祖である“
混沌の皇女
(
ケイオスブライド
)
”を初めて見た時とは違う感覚だった。
男から感じるのは、何もない恐怖。ただひたすらに何もなく、空っぽな恐怖だった。
「大丈夫だよ、安心してくれ。僕としてもこの土地を消すことは本意ではないからね。だから三十分以内に次なる神の意志にたどり着く者が決めれば、責任を持って僕が直すからね」
子供のような無邪気な笑みを浮かべる男。
それは裏表もないような言葉そのままの意味だと少女は思えた。通常ならばありえない。しかし、この男なら切られた地脈を復元することさえ可能ではないか考えている。
「それじゃあ、あとは任せるよ。この土地が滅ぶのが先か、君たちの誰かが神への挑戦権を得るのか傍観させてもらうよ。じゃあね」
大きく手を振りながら男の体が徐々に消えていく。
そして男の姿は完全に闇へと溶けて消えていった。
残されたのは、二人のボロボロの吸血鬼。どちらもいつ気を失ってもおかしくはない。
ただどちら
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