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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
56.終局の手前で
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にいればどんなものであっても、いくら眷獣であっても無意味だ。
「これで……一体目……」
「なるほど、一体づつ潰していくって算段かァ……」
青年は笑みを浮かべた。
「だったら頑張って全部潰せよなァ!」
右腕が膨大な魔力を纏った。これまでの比じゃないほどに魔力が溢れ出る。
姿を徐々に表していく獣たち。二つの大きな牙を持つ猪。紅蓮の炎を纏う角を持つ牛。白銀の翼を足に持つ羊。背中に巨大な盾を背負う鼠。そして、体中から蛇を生やした長身の女。
少女は震える体を必死で抑えて右腕を鮮血で染め上げる。
「力を貸して、“
真実を語る梟
(
アテーネ・オウル
)
”、“
神光の狗
(
アポロ・ガン
)
”、“
純愛なる白兎
(
アフロディテ・ダット
)
”!!」
黄金の翼の梟。太陽の輝きを放つ狗。無数の泡からなる白兎。
並び立つ神の名を持つ者たち。
圧倒的な魔力が大気を震わせ、引き裂き、大地を軋ませ、砕く。
「それじャあ……総力戦と行こうかァ!」
青年が指の骨を鳴らすと一斉に動き出した。
これまでにないほどの濃密な魔力が襲う。
数も、質も、圧倒的なまでに劣勢な少女。
勝敗など誰が見ても歴然だった。しかし少女は諦めない。挫けない。逃げない。
───だからこそ……
「この戦いは平等じゃないといけないよね」
ぶつかり合う神々の間に立つのはボサボサ頭の男。そんな場所にいるのはただの自殺行為だった。
しかし、男は薄い笑みを浮かべて右腕を闇夜へと掲げる。そして指を鳴らした。
乾いた音が大気を小さく震わせる。同時に男を中心に波動のようなものが出現。それは一瞬にして広範囲へと拡散し、ぶつかり合う神々も、その主人たちも包み込んだ。
「なんだ!」
「何が起きてる……の!」
少女は目の前に広がった光景に目を疑った。先ほどまでいたはずの神々の名も持つ者たちはその姿を消し去っていた。
「戦いに水を刺してしまって悪いとは思っているよ。だけど、これでは平等な戦いとは言えないからね。少しだけ手を出させてもらうよ」
男の雰囲気に戸惑う少女。対して青年は敵意をあからさまにむき出しした。
「邪魔をするってんならテメェから消してやるよォ」
青年が動くよりも早くボサボサ頭の男は掲げていた右手を拳で固めて勢いよく地面に叩きつけた。
すると大地から無数の光芒が噴き出した。それと同時に少女の体を襲いかかるような重圧と激しい揺れ。唐突に感じたことのない息苦しさが少女を襲った。
その正体に気づいた少女は驚愕した。
大地から噴き出した無数の光芒の正体。それは膨大な魔力。この土地を支えている地脈の魔力が凄まじい勢いで大気へと放出されていく。
そんなことをすればこの土地に与えられるダメージは計り知れない。もしかすれば、この
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