暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
56.終局の手前で
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度大きなため息をついてめんどくさげに呟いた。

「強いて言うなら、この祭典(たたかい)の均衡を保つ者かな」

「…………」

ローブは何も口にしない。
わずかな沈黙の後に先に口を開いたのは男の方だった。

「君も完全な部外者というわけではないが、流石にやりすぎだね。あくまでもこれは彼らの戦いだ。十四(・・)の柱から成る神々のね」

男の言葉にローブがわずかに身体を震わせたのちに「……ソウイウコトカ」と小さく呟く。
その声色は、今までにないほど恐怖を感じた。
歓喜、狂気、殺意、嫉妬、憎悪。グチャグチャの感情が混ざり、溶け合い、結合された気色の悪い言葉。ただの言葉のはずなのに、そんな気味の悪さに吐き気がする。
そして、ローブの体が徐々に靄のように薄くなっていく。

「コレハ、始マリダ……生者ト死者ノ境界ヲ消スタメノ。ソウスレバ、オマエノ望ミモ果タサレルダロウ」

意味不明な言葉を残して、ローブは姿を完全に消した。

「……そうかもしれないな。だが、それは君の役目じゃないよ、原初の残骸」

男は消えて行ったローブに微かな声で言うと腕を大きく上げて伸びをし終えると、

「さて! それじゃあ、僕は行くけど。彼が起きたら伝えといてくれないかな。……待っていると」

起きるはずがない少年に何を言えと言うのだ。
友妃は悔しさと涙を堪えながらかつて彼だった者に目を向ける。

「え……」

思わず声が漏れた。
ありえないことだった。目の前で何もできずに消え入った少年。彼の亡骸がいた場所にそこにははっきりといた。
見覚えのある顔の少年が地面に倒れている。

「彩……と、くん……」

動かなくなっていた身体が一歩前に出た。すると一歩、また一歩と動き出す。

「彩斗君!」

彼の元まで駆け寄る。彩斗の身体を抱き上げる。温もりが、鼓動が、吐息が抱きしめた身体から伝わってくる。

「……よかった」

涙が溢れ出るのも気にせずに友妃は彩斗の身体を抱きしめ続けた。





街に轟音が響く。爆発し、燃え上がり、溶けて、原型を消していく。
ここは地上に顕現した地獄そのものだった。街はその機能を失い、瓦礫の山と化し、燃え盛る大地に溶けたアスファルトの臭気が漂う。そこには無数の死があるはずだ。ただ瓦礫に隠れて、炎に燃えてわからないだけでそこには確実にいる。
人の死があり、機能が失われた街を地獄と呼ばずになんと言えばいいのだろう。
そこには生きている人間はなどいない。
いるのは……

「アテーネ、防いで!」

豪雨のように降り注いでくる蛇の群れ。それを全て受け止める巨大な梟。その後ろに立つのは制服姿の少女。向かい合うのは、金髪の緋色に瞳を燃やす青年。
少女の姿はあまりにもか弱く
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