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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
56.終局の手前で
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「彩斗君───ッ!!」
悲鳴にも似た声を上げるが、名前を呼ばれている本人は空気が漏れたような声しか出せない。
不可視の物体が彩斗の身体を締め付けている。
友妃は必死で術者であるローブに魔力を込めた拳を振るう。しかし回避動作すらすることしないローブ。その身体はまるで実態がないように友妃の拳をすり抜ける。
吸血鬼の霧化とも違う。ただ元からそこに実態がないような感覚。だが、仮に実態が別の場所にあるとしても空間置換、魔力障壁、不可視の物体、その全てを行える魔術を別の場所から行うことなど聞いたことがない。
式神程度なら遠方から操ることは可能。だが、それも師である縁堂縁ほどの術者でなければ不可能。
ならば、やはり実態はこの場所にありながら未知の方法を使用している。だとしても、そんな奇跡を起こせるのは魔術以外の何者でもない。ならば、夢幻龍の如何なる神秘も消すことができる刃を透過した理由がわからない。
「か……ぁ……」
力なき少年の声が漏れる。
「彩斗君!!」
ダラリと伸びた手を必死で掴もうとする。
───グチャッ!!
目の前で響いた気色の悪い音とともに友妃の体に生暖かい液体が降り注いだ。
大量の液体は、友妃の体を一瞬で染めていく。
赤に、緋色に、朱色に……
染められた手を見る。
そして目の前に大きな音を立てて何かが落下した。もはや、それがなんだったのかもわからないほどに原型を止めることなくそれはそこに落ちた。
「い……や……いやァァァ───ッ!!」
友妃の叫びが闇夜にこだまする。
心が壊れていく。目の前で知っている人が人ではなくなる瞬間は、あまりにも一瞬だった。
人の命なんて
化け物
(
かれら
)
の前では、無に等しく。いくら抵抗できたとしても勝ち目など最初からなかった。
もしも友妃が命令を守って、“
神威の暁
(
オリスブラッド
)
”と戦わずに無理矢理でも彩斗を止めて入れば、もしも一瞬でも勝てる抵抗できるなどと思わなければ彼は死なずに済んだかもしれない。
───ボクのせい……だ……
体から力が抜けていく。
戦う意思が消えていく。
脳が思考するのをやめていく。
コツン、コツンと音が近づいて、反響して、遠退いて、地を這って、宙を舞っていく。どこにいるかもわからない。だけど確実にそれはこちらへと近づいている。
「真ニソノ意思ヲ継グ者ヨ……邪魔ハ消エタ……サァ……覚──ッ!」
くぐもった声が語りかける。その時だった。
ローブが言葉を止めて大きく後方へと飛び退いた。同時に凄まじい光が友妃の真横を通り過ぎる。
一瞬、そちらに目を向けるが無意味なことだと理解してやめる。
もう友妃はどうでもいいことだ。
「いやいや、困るよね。確かに君の乱入で祭典は盛り上がったことが認
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