第22話 永遠の十字架
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たから! だからッ!」
息を荒げ、咳き込み、血を吐き。それでもRは、訴えることをやめない。よじ登るようにアレクサンダーのズボンを握り、叫び続ける。
そんな彼から目を背けるように、元捜査官はヘルメットに手を伸ばす。だが、ここから逃げ出したいという心理とは裏腹に、それ以上彼の手が動くことはなかった。
「……仮に、そうだと、しよう。だとしても、だ。そんな私に、君がこんなになってまで付き合う理由が、どこにある」
「答えていないから、だ。まだ……あなたの問いに」
「……!」
Rがその一言を呟いた時。彼を避けていたはずのアレクサンダーの眼が、少年の瞳に引き付けられてしまった。
全てを切り捨てようとしても。この少年は、その全てを拾い集めて来てしまう。
「あなたは、答える必要などないと言った。でも……オレは答える」
「……ッ」
その先に待つ言葉を予見し。アレクサンダーは、観念したように瞼を閉じると、悲痛な表情を浮かべ愛車に寄り掛かかる。「カワサキ・NinjaH2」の逞しい車体が、主人の体重を受け止めていた。
「……オレは、あなたを許します。もう、誰も怨んだりなんかしない。だからあなたもどうか、許してください。オレの罪なんかじゃない。こうするしかなかった、あなたの弱さを、全て……」
「く……ッ!」
――受けた言葉は、予想通りだった。短い付き合いの中でも、飛香Rという少年を知っていたアレクサンダーにとって……これは、ある意味では理想だったのである。
彼自身、こんな復讐に意味がないことなどわかっていた。仮に会長を殺せたとしても、頭が挿げ替わるだけで大した損害には至らない。そんなものは復讐にすら値しない、ただの八つ当たりだと。
それでも、会長を殺すと声を上げて飛香Rを呼び寄せたのは……ただ、理解者が欲しかったからに他ならない。同じ少女を愛し、それゆえに共に戦った彼ならば、自分の苦しみも分かってくれるだろう、と。
だが、そんな自分を情けないと思わないはずもなく。アレクサンダーは自分自身を罰するため、望みであった彼の赦しを拒み、独りになろうとした。
自分が望んでいたものを全て捨て去ることで、彼は自分を裁こうとしていたのである。
――だが、Rはそれをさせてはくれなかった。
アレクサンダーが内心で望んでいた通り、彼の苦悩を理解していたRは。彼が本当は、罪に苦しむ生き方から逃れたい――赦しが欲しいのだということを、知っていたのである。
だから彼は、戦いを望まないアレクサンダーの眼を見て、その真意に気づいたのだ。
「……R君。許されるはずがないだろう。私は、君をッ……!」
「……うん。だから、オレが許すんだ。ここには、オレ達しかいない。オレ達の罪はオレ達にしかわからないから……
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