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Darkness spirits Online
第21話 罪と罰
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に彼を理解していた。そんな彼女の結論としては、Rをこの会場へ招待するわけにはいかないのである。
 優璃もその旨は常々聞かされていたため、わかっていたことではあったのだが。それでも会いたいとぼやいてしまうのは、恋する乙女の性なのかも知れない。

「……来年の誕生日には、飛香さんから花束でも頂きましょうか」
「……! あ、飛香君からの花束、かぁ……!」

 そんな優璃の胸中を慮るように、利佐子は励みとなる言葉を投げかけた。最高に好きな相手から、最高に好きな物を貰えたら――という想像に囚われた優璃は顔を赤らめ、でれっと頬を緩める。

「おっと。それで満足してはなりませんよ、お嬢様。それじゃ足りない、と駄々をこねてデートに漕ぎ着けるのです。映画を見て、花屋を巡り、自然に囲まれた並木道を2人で……」
「ふ、2人きりでデート……! う、うんいいね! それ採用! 利佐子ありがとう、なんだか気力戻って来た!」
「ふふっ、お嬢様のニーズならお見通しですよ」

 想像しうるシチュエーションを次々と聞かされた優璃は、先ほどまでの疲れが吹き飛んだように目を輝かせた。そんな彼女の姿を微笑ましげに見つめ、利佐子は幼馴染に元気が戻ったことに安堵する。

(……そう、お嬢様の恋を叶えるためなら……)

 ――誰にも気づかれぬよう、ひた隠しにして来た想いを押し殺し……ドレスの胸元を、握り締めながら。

「優璃お嬢様、お久しぶりです。あなた様の誕生日を祝う、この席にお招き頂き、感謝の言葉もありません」
「あっ……」

 すると。話し掛ける機会を伺い続けていたのか、優璃が上機嫌になった途端に、身なりのいい1人の男性が話しかけて来た。先ほどまで彼女に集まっていた御曹司達と同様、伊犂江グループ傘下にある大企業の子息である。
 しかし優璃の中ではあまり印象に残っていなかったのか、「久しぶり」という言葉に上手く反応できずにいた。隙あらば口説こうと歩み寄る男達に、利佐子は隣でため息をつく。

「いやはや、しかしいつにも増してお美しい。16歳といえば、結婚することも出来る年頃であるわけですし……やはりあなた様も、立派な淑女となられたということなのでしょうな」
「……はぁ、どうもありがとうございます……」

 先ほども聞かされたような言葉を受け、優璃は形式的に対応しつつも、内心でげんなりしていた。
 結婚ができる年齢といっても、優璃自身はまだ高校1年生でありそんな予定は全くない。いつになるかもわからない未来の話で盛り上がる彼らに、優璃は居心地の悪さを感じていた。

「ただやはり心配なのは、この場に招かれた他方の企業関係者らに限らず、あなた様が通われている学校にまで、悪い虫が湧かないか……ということでしょうか。確か以前は、分不相応な贈り物を寄越してくる
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