第21話 罪と罰
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あの問いは、撤回しよう。君は私を許す必要などない。思うがまま、私を憎めばいい。……私も、己に従い復讐を果たす」
「……さ、せ、ないッ……!」
――このままでは、行かせてしまう。それだけは、あってはならない。
Rはその一心で、歪んだ視界に映るアレクサンダーを見据え……立ち上がり始めた。並の成人男性なら、1時間は動けなくなるような蹴りを浴びていながら。
彼の精神はすでに、「一介の男子高校生」の肉体を凌駕している。
「……やはり君は大した男だ。並の成人男性なら、当分は動けないはずだが……」
「ゲームにだって、体力は要るんだよ……!」
「そうか。だが、すでに限界は見えている。……共に戦ったよしみだ。これ以上邪魔をしないのであれば、危害は加えないと約束しよう」
そんな彼の、普通の高校生からは逸脱した耐久力に、微かに目を見張り。その内心を隠すように、アレクサンダーは目を背けた。
だが、Rは自分から目を離す彼を引きつけるように、声を張り上げる。
「オレが邪魔なら……なんで、あんなメールを送った!」
「……」
「ギルフォードと組んでいた会長を殺しに行く、なんて言われて……納得できるわけがないだろッ!」
Rは震える両足で、アスファルトを踏みしめ――渾身の力で立ち上がった。視界は歪んでいても、意識は濁っていても、その眼は何一つ見失うことなくアレクサンダーを射抜いている。
並々ならぬその気迫に、アレクサンダーは一瞬目を見張り――深くため息をついた。
「……オレが、警察にこのことを報せていたら、どうするつもりだったんだ」
「報せない男だと知っていたから、私は君に伝えたんだ。君なら必ず大事にしまいと、説得に駆け付ける――とね。事実君はこうして、私を止めに来ている」
「……っ」
その淡々とした口調で語るアレクサンダーの眼は、哀れみにも似た憂いを帯びていた。Rは彼の言葉を受け、いいように乗せられていると感じ、唇を噛みしめる。
「自分が何も知らない間に、友人の父親が殺されたと知れば……君は何も出来なかったと嘆くだろう。だからあのメールで君を誘い、この場を設けたのだ。君が、精一杯の抵抗を尽くせるようにな」
「アレクサンダーさん、あなたは……!」
やがてRは、ようやく定まり始めた視線をアレクサンダーに注ぎ、再び拳を構えた。差し違えてでも、と言わんばかりの眼を見つめ、アレクサンダーも身構える。
――その瞳は、これ以上戦うことを、望んではいなかったが。
「……まだ続けるのか? 怪我が増えるぞ」
「……オレは、諦めない。諦めるわけには、いかないッ!」
そんなアレクサンダーの貌を目の当たりにしたRは、何かに気づいたように一瞬だけ眼を見開き――すぐさま、鋭い目付きに切り替えた。
そ
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