第20話 終わらない憎しみ
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らに残っていようものなら、現実に帰還した今でも禍根が残っていたかも知れない。その可能性に配慮して彼らの記憶を消去したFBIの判断に、Rは密かに感謝していた。
(でも……本当に、そうだったのかな)
――だが、一方で。本当に何一つ以前と変わらないまま、とは言いにくいところがあった。
利佐子はRと話す際、胸元や下腹部をさりげなく隠すようになり。宗生は優璃に欲を滾らせた視線を注ぎつつも、以前よりさらに近寄れなくなり。大雅はRに冷たく当たりつつも、なんだかんだと理由を付けて助けるようになった。
――そして、優璃は。以前より少しだけ、Rに対して積極的になっていた。
もしや彼らは、あの時のことを覚えているのではないか。そう勘繰ったRは、彼らに対して探りを入れたこともあったのだが……どうやら、明確にあの世界のことを覚えているわけではないらしい。
だが、アバターに作用するプログラムでも消しきれない人間の感情は、少なからず今の彼らに影響を及ぼしているようだった。
「Rー! そろそろご飯よー!」
「あ、はーい! 今行くー!」
――すると思考を断ち切るように、母の声が下のリビングから響いてくる。Rは返事と共にベッドから身を起こすと、考えることを一時中断した。今は、空腹を満たすことが先決である。
「……ん?」
だが、そのタイミングで今度は携帯がメールの着信を知らせてきた。
一瞬、後で見ようとも考えたRだったが、先に内容だけ確認して食事中に返信内容を考えることに決め、携帯の画面に視線を移す。
メールの差出人は――アレクサンダーだった。
(アレクサンダーさん……!?)
数日連絡がなく、もう聞くことなどなくなったのかと思いきや。予期せぬタイミングでやってきたメールに、Rは思わず見入ってしまう。
(ひょっとして別れの挨拶とかかな。アレクサンダーさんも、もう随分日本にいるし……)
帰国する日が近いなら、次に会うまでに何か東京の土産でも買っていこうか。
そう思案するRは、携帯に触れた指を滑らせ――
「……え」
――その内容を目の当たりにして、暫し硬直した。
何が書かれているのか、それが何を意味しているのか、そこにどのような意図があるのか。僅か数秒の間、彼はそれを理解することが出来ず絶句していた。
「Rー? ご飯冷めちゃうわよー?」
それから、さらに数秒。再び母が呼びかけてくるが、Rは反応できずにいた。
――無事に事件から生還してきた息子へ、毎日のようにご馳走を振る舞う母。そんな彼女を表面上では煙たがりつつも、内心では確かな愛情を感じて嬉しさを覚えていたR。
また今日も、口先だけの文句を言いつつ、母の手料理を楽しむのだろう。何一つ疑
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