第20話 終わらない憎しみ
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携帯に視線を落としていた。今は黒のTシャツに赤いダメージジーンズという、ラフな格好になっている。
――ギルフォード事件で、巻き込まれた乗員乗客85名は全員、その記憶を抹消されていた。それゆえ、誰も事情聴取やインタビューに、事件の内容を語ることができなかった。
それがこの事件についての、表向きの結末である。
しかし、その裏ではFBI主導による「記憶を持った当事者」への事情聴取が進められていた。
警察関係者達が、すでに被害者達が記憶を失っていると知りながら事情聴取を行なったのは、その存在を公にさせないため。たった一人の、記憶を持った少年を世間から隠すために、彼らは形式だけの聴取を行なっていたのである。
……本来。「ただ一人記憶を持った帰還者」は、対電脳チップにより解析班の記憶消去プログラムを回避できる、アレクサンダー・パーネル捜査官であるはずだった。
しかし彼は最後の最後で、ギルフォードに自身のアバター「オーヴェル」を殺害され意識を失った。このため、「アレクサンダーだけが事件の情報を持ち帰る」というFBIの当初の計画が破綻。
さらに「DSO」における主役だった「ヒカル」こと飛香Rが、ゲームマスターでありホストでもあるギルフォードを倒したことで、解析班のハッキングとは異なるルートでログアウトする事態に発展。
予期せぬ「第二の記憶保持者」となった彼は、記憶を持たない他者に紛れてFBIの聴取を受けることになったのである。
飛香Rはいわば、ギルフォード事件における重要参考人。天坂総合病院で彼と接触したアレクサンダー・パーネルとキッド・アーヴィングは、無意味な事情聴取に紛れて、彼から「オーヴェル」死亡後の詳細を聞き出した。
そして、あの状況下でも戦い抜くための情報を引き出したのである。
その後もRは情報提供者としてアレクサンダーと連絡を取り合い、たびたび彼と顔を合わせる関係となっていた。
アレクサンダーとRから入手した事件の情報を本部に持ち帰るべく、キッドはすでにアメリカ本国へ移動している。
(……でも、よかった。みんなが、あの世界の出来事を覚えてなくて……)
これまで続いていた連絡が数日途絶え、Rは思案を巡らせつつ――ベッドの上に身を投げ、ふぅと息を吐き出す。
そしてアレクサンダーのことを気にかける一方で、自身が懸念していた「帰還後のクラスメート達の変化」がさほどなかったことに、胸を撫で下ろしていた。
ダイナグとノアラグン――つまりは信太と俊史。彼らとパーティを組んでクエストをこなしていた頃。盗賊に苦戦している騎士達を助けに行く、という旨の撃退クエストがあったのだが。
敵も味方も、両方がクラスメートだったのである。
もし、その時の記憶が彼
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