第20話 終わらない憎しみ
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よ、私が貸してたもの返してもらっただけ」
「……そ、そうなのか……?」
だが「何を」渡したかまではわからなくとも、「何か」が優璃の手に渡ったことには、近くにいた大雅が気づいていた。彼は当然ながらRに詰め寄ろうと厳しい視線を向ける……のだが。
それより早く、彼を庇うように進み出た優璃がにこやかに対応し、大雅は訝しみながらもすごすごと引き下がった。
(こういうのバレたら、飛香君困っちゃうもんね。ここは私に任せて)
(あぁ……うん、まぁね。ありがとう、伊犂江さん)
(ううん……だって、飛香君からこんな素敵なプレゼント貰えたんだもん。私だって、何かお返ししたい)
(伊犂江さん……)
(……ふふ、でも飛香君ったら、学校にこんなもの持ってきちゃって。いけないんだー)
(あ、あはは……返す言葉もありません)
(もう。春野先生のこと、あんまり困らせちゃダメだよ?)
(……ごめん、これっきりにしとくよ)
(うん、よろしい!)
そんな彼を一瞥し、優璃はそっと耳打ちする。頬を染め、幸せに溢れた笑顔を向けながら……やがて彼女は利佐子と共に教室に戻っていった。
「……さ、戻ろ! そろそろ授業始まっちゃうよ!」
「飛香さん、さぁ早く。次の授業、冬馬先生ですよ。真面目に受けないと、八つ当たりの標的にされてしまいます」
「う、うん。……春野先生のことでオレ達に当たるの、やめてほしいんだけどなぁ……」
「……全くだ」
そんな彼女達に手を振りつつ、Rも大雅と顔を見合わせ、教室へと引き返していった。すでに教壇には、苛立った表情で足踏みを繰り返す冬馬海太郎の姿が現れている。
――どうやら今日も、食事の誘いを断られたようだ。
「R! アレはどうした、アレ!」
「ん? アレって……?」
「Rが持ってるあのゲームなんだねっ! あの激レアプレミアムものの前時代携帯ゲーム! 今日こそ貸してくれるってハナシだったはずだねっ!」
「あ、ごめん。さっき伊犂江さんにあげちゃった」
「んぬぁあぁにぃぃい!?」
「契約不履行なんだねぇえぇ!」
そして――R秘蔵の携帯ゲーム機を借りようとやってきた、鶴岡信太と真木俊史。彼らが周囲から集まる軽蔑の視線を無視して、怒号を上げる一方で。
(……誕生日、か)
亡き恋人の命日に想いを馳せ、Rは窓の向こう――青空の遥か彼方を見つめていた。かつて捨てたはずの思い出に彩られた、彼女の故郷の方角を。
◇
(……アレクサンダーさん、ここしばらく連絡して来ないな。さすがに、もう聞くことはないってことなのかな)
その日の夜。
上流階級が集まるパーティで賑わっているであろう、伊犂江グループ本社ビルを遠くから見つめ。
自宅の一軒家から東京の夜景を眺めるRは、手にした
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