第20話 終わらない憎しみ
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んて覚えてないんだから、全然ピンと来ないんだし。……どう返したらいいのかなぁ」
「必要なら私がお嬢様に代わり、キツくお灸を据えましょうか」
「……やめたほうがいいと思うな。そういう時の利佐子って、ほんと容赦がないんだから」
「い、いろいろ大変だね……」
「せっかくお嬢様の誕生日なのに、当のお嬢様を困らせる人達ばかりですからね。……それよりっ」
すると。利佐子は眉を吊り上げRを見上げると、ツカツカと歩み寄り彼の耳元に近寄った。そして、子供を叱るような口調で彼に囁く。
(……なんであなたまで何も用意していないんですか! せっかくお嬢様の誕生日なのにっ!)
(えぇ……? でも、プレゼントを渡したら伊犂江さんが困るってみんなが……)
(それとこれとは別ですっ! 今年に入ってようやく飛香さんとお知り合いになれたのに、プレゼントが何もないなんて……!)
(べ、別なの……? というか、今年に入ってようやくってどういう――)
(とにかく何でもいいから早く渡してあげてください! 飛香さんの贈り物なら、例えシャーペン1本でも大喜び必至なんですからっ!)
(シャ、シャーペンて……うーん……)
その話に、Rは半信半疑といった表情を浮かべる。が、優璃はどことなく何かを期待するような眼で彼を見ていた。
彼女の後ろでは、男子達が誕生日を祝う声が聞こえてくるが……そんな彼らに対応しつつも、彼女の意識はRにのみ向いているようだった。
「あー……と、ごめん伊犂江さん。せっかくの誕生日なのに、何も用意してなくてさ。えと、オレが持ってる昔のゲームとかいる?」
当然ながら、そんな物がプレゼントとして成り立つはずはない。が、Rがすぐに用意できるものなんて、それくらいしかないのである。
隙間時間を利用するため、常に懐に忍ばせている携帯ゲーム機くらいしか。
「えっ……いいの!? だってそういうの、飛香君の宝物なんじゃ……」
「他に渡せる物なんて何もないしさ。あ、春野先生には内緒ね」
だが優璃にとってそれは、愛する少年から渡された初めての贈り物。何よりもかけがえのない、宝物であった。利佐子の影に隠れるように、そっと懐から携帯ゲーム機を取り出したRは、それを彼女に手渡す。
その際に近寄った瞬間、優璃はかぁっと頬を赤らめていたのだが……周りに隠しながら携帯ゲーム機を渡そうとあくせくしているRは、それに気づくことはなかった。
――そして、Rが願った通り。彼が優璃にゲームをプレゼントする瞬間は、誰にも見られることなく終わった。
空気を読んで、彼らの間に立ち周囲からRの私物が見えないようにした、利佐子のファインプレーである。
「……!? おい飛香R! 貴様今何を渡した!? プレゼントじゃないだろうな!」
「あはは違う
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